デジタル大辞泉 「惑う」の意味・読み・例文・類語 まど・う〔まどふ〕【惑う】 [動ワ五(ハ四)]《上代は「まとう」》1 どうしたらよいか判断に苦しむ。「さて何と言ったものやら、有繋さすがに―・ったのである」〈紅葉・多情多恨〉2 道や方向がわからなくなる。まよう。「知らない街角で―・う」3 悪いことに心が奪われる。「誘惑に―・う」4 うろたえる。あわてる。「格子上げらるる音を聞きて、いかならむと驚き―・ひて」〈落窪・一〉5 (動詞の連用形に付いて)ひどく…する。「思い―・う」「踏み―・う」「いかに思ほし―・ふらむ」〈落窪・一〉[類語]迷う・戸惑う・迷わす・惑わす・思い惑う・迷妄・迷夢 出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例 Sponserd by
精選版 日本国語大辞典 「惑う」の意味・読み・例文・類語 まど・うまどふ【惑】 〘 自動詞 ワ行五(ハ四) 〙 ( 古くは「まとう」 )① どの道を進んだらよいかわからなくなる。道に迷う。あちこちする。[初出の実例]「秋山の黄葉を茂み迷(まとひ)ぬる妹を求めむ山道知らずも」(出典:万葉集(8C後)二・二〇八)② 考えが定まらずに、思案する。分別に苦しむ。途方に暮れる。[初出の実例]「月読(つくよみ)の光は清く照らせれど惑(まとへ)る心思ひあへなくに」(出典:万葉集(8C後)四・六七一)③ どうするという考えもないうちに、まごつきながら行動する。あわてる。狼狽する。[初出の実例]「あのくしの箱得んとあめりとのたまへば、まどひ持て来て」(出典:落窪物語(10C後)二)④ あれこれ難儀する。苦労する。苦しむ。なやむ。[初出の実例]「その胸をやみ給ひし夜は、いみじうまどひて」(出典:落窪物語(10C後)二)⑤ 髪などが乱れる。ほつれる。[初出の実例]「御髪の久しう梳(けづ)りなどもせさせ給はねど、まどへる筋なくゆらゆらとして」(出典:狭衣物語(1069‐77頃か)二)⑥ 他の動詞に付いて、その動作の程度が激しいことを表わす。ひどく…する。ひたすら…する。[初出の実例]「案を書きて、かかせてやりけり、めでまどひにけり」(出典:伊勢物語(10C前)一〇七)惑うの語誌( 1 )「古事記‐上」に見える神名「大戸惑子神」の訓注に「訓レ惑云二麻刀比一」とあるところから古くは「まとふ」と清音であったとされる。( 2 )本来は、事態をじゅうぶん把握できずに対処のしかたに迷う意である。平安時代後期になると「まよふ(迷)」との区別が薄れる。( 3 )「まよう(まよふ)」が進む道や目標がわからずあちこち動き回るという行動に重点があるのに対して、「まどう(まどふ)」は、どちらかというとどうしたらよいかわからずおろおろするという心理状態に重点があると言われる。 出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例 Sponserd by