改訂新版 世界大百科事典 「感熱記録紙」の意味・わかりやすい解説
感熱記録紙 (かんねつきろくし)
thermographic paper
heat-sensitive paper
熱を加えると発色する化学物質を含んだ感熱層を表面に塗布した紙。単に感熱紙ともいう。加熱ペンの役割をするサーマルヘッドからの熱エネルギーだけで簡単に記録でき,しかも電子機器との組合せが可能なことから,ファクシミリやプリンターの記録材料として急速に成長している。日本では1971年に生産販売が開始されたが,ノーカーボン紙(感圧複写紙)に比較すれば,消費量ははるかに少ない。ノーカーボン紙と同様に2成分の反応による発色形式をとっており,電子供与性を有する無色のロイコ染料(クリスタルバイオレットラクトンなど)と電子受容性の顕色剤(フェノール系酸性物質)とを微粒化し,結合剤とともに塗布してある。2~10ミリ秒の間300℃に加熱すると微粒子が溶融し,クリスタルバイオレットラクトンにフェノールが作用してラクトン環が開裂,電子の移動が起こって発色すると考えられている。染料と顕色剤を分離しておくために,ポリビニルアルコールやカルボキシメチルセルロースなども添加される。複写を何枚もとることを目的としない電卓の記録紙や乗車券などの分野に使用され,電卓記録紙の場合には40μm程度の薄物,乗車券では200μmの厚手が用いられる。また,サーマルヘッドの温度を高低2系統にすることにより,2色表示することもできる。
執筆者:臼田 誠人
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報