広義には筆記圧によって複写をとることが可能な加工紙で、カーボン紙とノーカーボン紙をさすが、狭義にはノーカーボン紙をさす。ノーカーボン紙は、カーボン紙のように汚れず、また薄くすることができるため、多くの枚数の複写をとることが可能で、カーボン紙にかわって多く用いられるようになった。ノーカーボン紙の発色には、(1)化学的原理を応用したものと、(2)物理的原理を応用したものとがあるが、現在前者が多く用いられる。
化学的ノーカーボン紙は、筆圧によって2枚の紙が保有する化学物質間に化学反応が生じて発色するもので、1950年代にアメリカのナショナル・キャッシュ・レジスター(現NCR)社により製品化された。通常、裏面に発色剤を内蔵するマイクロカプセルを塗布した上層紙と、表面に顕色剤を塗布した下層紙を一組とする。複写の際に上層紙に筆圧を加えることによってマイクロカプセルが破れ、中の発色剤がにじみ出て、下層紙の表面の顕色剤と反応して複写がとれるようになっている。マイクロカプセル中に封じ込める発色剤とマイクロカプセルの製法、また顕色剤の組成および製法には各種ある。たとえばマラカイトグリーンラクトンやクリスタルバイオレットラクトンのように、無色ではあるが酸性物質に触れると濃く顕色する物質を溶剤に溶かし、分散させてコロイド状にし、さらに被膜に包み込み、径1~30マイクロメートル(1マイクロメートルは1000分の1ミリメートル)程度の微粒にしてカプセルとして用いる。またこのようなカプセルに対しては酸性白土や酸性の合成樹脂などが顕色剤として用いられる。
物理的ノーカーボン紙は、筆圧によって2枚の紙の間に生ずる物理的変化が複写を可能ならしめる加工紙である。一例として、裏カーボン紙のカーボンをマイクロカプセル化したものでは、上層紙に筆圧を加えれば裏面のマイクロカプセルの皮膜が破れ、カーボンが下層紙の表面に移行して複写を可能にする。
[御田昭雄 2016年4月18日]
単に感圧紙ともいう。広義には筆記圧によって複写をとるための加工紙であるカーボン紙およびノーカーボン紙をさすが,狭義には後者のみをさす。ノーカーボン紙はアメリカのナショナル・キャッシュ・レジスター社が1953年に発明した製品であるが,日本でも3社が独自技術を開発し,急成長した高付加価値紙製品で,カーボン紙の伸び悩みとよい対照をなす。文字どおり紙に黒色の部分はなく外観上は普通の紙であるが,記入する上層の紙の裏面には無色の発色性色素を,複写する紙の上面には顕色剤を塗布してあり,2枚の紙を重ねて強く押すと両者が混合し発色する。しかし両液をそのまま塗布したのでは紙を重ねておいただけで発色するので,色素を次のように保護しておく。つまり,発色性色素を不揮発性油に溶解し,それを微粒子化し,その周囲をゼラチンや合成高分子で被覆してマイクロカプセル化する。無色染料には電子供与性のロイコ染料が用いられ,顕色剤には電子受容性の有機酸やレジンが用いられる。ノーカーボン紙はその製造工程や印刷時に圧力を受けるとカプセルがつぶれて発色してしまうので,これを防ぐためにカプセル塗料中にカプセルよりやや大きめのデンプン粒子などを混ぜて保護しておく。なお,1枚の紙の同じ面にマイクロカプセルと顕色剤を塗布したものもあり,これはセルフコンテーンド紙と呼ばれる。
執筆者:臼田 誠人
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…何種類かの医薬品を同時に投与すると有効であるが,あらかじめ直接混合しておくことはできないような場合にも,マイクロカプセル化は有効である。 感圧複写紙,すなわち筆記やタイプの際に加わる圧力によって複写をとる紙にも,マイクロカプセルが利用されている。これは,それぞれでは無色であるが混合すると互いに反応して発色するような2種類の化合物を利用するもので,一方の化合物をマイクロカプセル化し,複写の際上側に使う紙の裏面にぬってある。…
※「感圧複写紙」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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