成人T細胞白血病(読み)セイジンティーサイボウハッケツビョウ(英語表記)Adult T-Cell Leukemia(ATL)

デジタル大辞泉 「成人T細胞白血病」の意味・読み・例文・類語

せいじんティーさいぼう‐はっけつびょう〔セイジン‐サイバウハクケツビヤウ〕【成人T細胞白血病】

HTLV-1成人T細胞白血病ウイルス)の感染で起こる白血病ATL(adult T-cell leukemia)。
[補説]ウイルス潜伏期間が数十年と長く、乳幼児期に母子感染した保因者が40歳を過ぎてから発症することが多い。悪性リンパ腫となることもあるため、成人T細胞白血病・リンパ腫ATTL(adult T cell leukemia/lymphoma)ともよばれる。

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共同通信ニュース用語解説 「成人T細胞白血病」の解説

成人T細胞白血病(ATL)

白血球の一種T細胞に感染するウイルス「HTLV1」が原因の白血病。母乳や性交渉、安全対策前の輸血などで感染する。潜伏期間が数十年と長く、感染者の95%は生涯発症しないが、発症後急速に進行することがある。60歳ごろが発症のピーク。感染者は世界的にも九州や沖縄などの西日本に多く、国内で100万人に上るとされる。進行が速い場合は、化学療法骨髄移植などで治療する。

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精選版 日本国語大辞典 「成人T細胞白血病」の意味・読み・例文・類語

せいじん‐ティーさいぼう‐はっけつびょう‥ティーサイバウハクケツビャウ【成人T細胞白血病】

  1. 〘 名詞 〙 レトロウイルスに属するヒトT細胞白血病ウイルス(HTLV)の感染と関連して、成人に発病する急性の白血病。ATL。

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家庭医学館 「成人T細胞白血病」の解説

せいじんてぃーさいぼうはっけつびょう【成人T細胞白血病 Adult T-Cell Leukemia(ATL)】

[どんな病気か]
 リンパ球(白血球(はっけっきゅう)の一種)のうちのT細胞が異常になる白血病で、おもに40歳以降の人におこることから、「成人」という形容詞がついています。
 異常になったT細胞をATL細胞といい、HTLV-Ⅰ(ヒトTリンパ球向性ウイルス)というレトロウイルスの感染が原因で出現します。
 四国、九州、沖縄に多い病気ですが、その他の地域でも散発的にみられます。
 感染経路は、母乳によるお母さんから赤ちゃんへの感染、性行為による異性間での感染、輸血による感染などが、おもにあげられます。
●種類
 病状の進み方などから、つぎの4つに分類されます。
①急性型
 ATL細胞が多数で、進行が早く、生命にかかわる危険が高いものです。
 リンパ節の腫(は)れ、肝臓、脾臓(ひぞう)、皮膚、肺などへのATL細胞の浸潤(しんじゅん)(取り込み)がみられます。高LDH(乳酸脱水素酵素(にゅうさんだっすいそこうそ))値、高カリウム血症などの血液の異常をともなうことも多いものです。
②慢性型
 多数のATL細胞がみられるのにもかかわらず、進行はゆるやかで、慢性(まんせい)リンパ性白血病(せいはっけつびょう)(「慢性白血病」)と似た経過をたどります。
 高LDH値、高カリウム血症があっても軽く、正常なこともあります。
③くすぶり型
 血液中に占めるATL細胞の割合が数%と少なく、ほとんどが無症状のまま経過します。
④リンパ腫(しゅ)型
 白血病としてよりも悪性リンパ腫(「悪性リンパ腫」)として経過し、急性型に転化しやすいものです。血液中のATL細胞の数はまれで、リンパ節の腫れが目だちます。
[検査と診断]
 血液検査でATL細胞が証明されるほかに、HTLV-Ⅰの感染を受けている抗HTLV-Ⅰ抗体(こうたい)が検出されるなどで診断がつきます。
[治療]
 急性型やリンパ腫型は、ATL細胞を撲滅(ぼくめつ)するための抗がん剤の多剤併用療法(たざいへいようりょうほう)を行ないます。
 慢性型とくすぶり型は、定期的に検査し、現在以上に病状が進行しないように薬を使用します。
 免疫(めんえき)が低下し、日和見感染(ひよりみかんせん)(感染症とはの「日和見感染」)がおこりやすいので、予防のための薬の使用も行ないます。しかし、予後はきわめて不良です。

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百科事典マイペディア 「成人T細胞白血病」の意味・わかりやすい解説

成人T細胞白血病【せいじんティーさいぼうはっけつびょう】

白血病は血液の癌(がん)で白血球が異常に増殖する病気だが,このうちレトロウイルスの一種であるHTLV(Human T-cell Leukemia Virus)-1に感染,発病する白血病のこと。adult T-cell leukemiaを略してATLともいう。日本はHTLV-1感染者が世界でもっとも多く報告されている。厚生省癌助成金研究班の調査によると,特に西日本に患者が多く,九州55%,近畿13%,中部5%などとなっている。海外ではジャマイカアフリカ,インドでよく見られる。 ウイルスの感染経路は出産時や授乳などによる母子感染,輸血,性交渉などがある。特に母乳によるルートが多く,粉ミルクに切り替えることで感染を防ぐことができることもわかっている。発病までの潜伏期間は20〜80年で,年間1000〜2000人に1人が発病する。 治療法は放射線治療,制癌薬,骨髄移植などがあるが決め手にはならず,死亡率が高い。 福岡大学医学部の立花克郎助手(薬物動態学)らのグループが患者の血液を試験管にとって超音波をあてたところ,癌細胞の66%を破壊することに成功,1997年2月に英国の医学誌《ランセット》に発表した。今後は,患者の血液をとって超音波をあてて体内に戻す方法や,血管に超音波発信素子を入れるなどの治療法が考えられている。また,熊本大学医学部の松岡雅雄助手が患者の細胞を調べたところ,リンパ球の細胞死を誘導する遺伝子が欠損していることを発見,1997年6月にブラジルで開かれた国際ヒトレトロウイルス会議で発表した。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「成人T細胞白血病」の意味・わかりやすい解説

成人T細胞白血病
せいじんティーさいぼうはっけつびょう
adult T-cell leukemia; ATL

レトロウイルスの一種である HTLV-1 (ヒトT細胞白血病ウイルス1型) が感染し,このウイルスに特有な pX遺伝子の産物 (pX蛋白質) が引き金となって起ると考えられている白血病。日本の九州,四国地方の一部に多発し,ウイルス感染後 20~30年の長い潜伏期間を経て発病する。このウイルスは ATL由来の培養細胞から京都大学の日沼頼夫らにより発見され ATLVと名づけられたが,その後,カリブ海沿岸の黒人に多い白血病患者から分離された HTLV-1と ATLVが同一のウイルスであることが証明され,どちらも HTLV-1と表記することになった。 HTLV-1は母乳を介する母子感染が多いことから,人工乳を用いる感染防止対策が立てられている。

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