戦時における中立国からの供給品で,それが敵国に向けられかつ戦争用に供せられることを理由に,交戦国が海上で捕獲または没収できる物品。中立国国民は交戦国と通商する自由を有するが,戦時禁制品の制度には服さなければならない。この制度は交戦国と中立国の間の主張の妥協を示すもので,1909年ロンドン会議で調印された〈海戦法規に関する宣言〉は,当時の慣行を中心に戦時禁制品についての詳細な規定をおいた。同宣言では,武器弾薬・軍艦等性質上もっぱら戦争用に使用される絶対的禁制品,食糧,貨幣,鉄道材料等性質上戦争用にも平和用にも使用されうるもので,敵国の軍や行政官庁へ仕向けられたことが証明されれば捕獲される条件付禁制品,羊毛,紙,看護用品等性質上戦争に供せられないため禁制品とは認められない自由品の3種類が区別され,列挙された。なお,そこに列挙されていないものでも,交戦国は禁制品として追加することができる。この宣言はイギリスの批准拒否のため発効しなかったが,一般に権威あるものとされ,第1次世界大戦当初,条件付きではあるが適用された。しかしその後,軍事技術の発達や総力戦への傾斜を背景に,この宣言の列挙による区別は無視され,第2次世界大戦では戦争に役立ついかなる生活必需品も禁制品の種目に入れられた。さらに,禁制品が中立港で積み替えられて敵国に送られる場合にも捕獲しうるとする連続航海主義に従って,敵国に到達すると推定される中立国向け商品さえ,捕獲・没収されるに至った。第2次大戦後の地域的武力紛争では,ロンドン宣言と類似の区別が認められる場合もある。
執筆者:藤田 久一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
中立国国民が交戦国に供給するのを、他方の交戦国によって妨げられる物品。戦時において、中立国国民と交戦国間の通商は原則としては自由であるが、戦時禁制品については交戦国軍艦が海上で敵国へのその供給を防止することができる。どのような物品が戦時禁制品となるかは国際慣習法、条約、国内法によって定められる。戦時禁制品は19世紀までしだいに縮小され、それだけ中立通商の自由が実質的に拡大されてきた。1909年、当時の支配的慣行を基礎として妥協の結果、主要海上国10国によって署名されたロンドン宣言は戦時禁制品について詳しい規定を設けたが、武器・弾薬・軍艦などもっぱら戦争に用いられる物品を絶対的禁制品、食糧・貨幣・鉄道材料など和戦両用の物品を相対的禁制品、羊毛・紙などを自由品として列挙している。しかし、第一次、第二次世界大戦では禁制品目が著しく増加し、ほとんどすべての物品に及ぶに至った。
[石本泰雄]
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
米テスラと低価格EVでシェアを広げる中国大手、比亜迪(BYD)が激しいトップ争いを繰り広げている。英調査会社グローバルデータによると、2023年の世界販売台数は約978万7千台。ガソリン車などを含む...
11/21 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新
10/1 共同通信ニュース用語解説を追加