扁鵲(読み)ヘンジャク(英語表記)Biǎn què

デジタル大辞泉 「扁鵲」の意味・読み・例文・類語

へんじゃく【扁鵲】

中国戦国時代伝説名医渤海郡(河北省)の人。姓は秦、名は越人。長桑君に学んで禁方の術を受け、かく太子急病を救ったという。耆婆ぎばと並び称される。転じて、名医をいう。

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精選版 日本国語大辞典 「扁鵲」の意味・読み・例文・類語

へんじゃく【扁鵲】

  1. 中国古代の伝説的名医。河南省の人。姓は秦、名は越人。その事績が紀元前八世紀から前四世紀に及ぶところから、名医の逸話が扁鵲一人に吸収され伝えられたと考えられる。→耆婆扁鵲(ぎばへんじゃく)
    1. [初出の実例]「病きはめておもき者の、薬ばかりにてはとうたがひて、服(ぶく)せずは、耆婆(ぎば)医術も、へんじゃくが医方も、益あるべからず」(出典曾我物語(南北朝頃)一二)

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改訂新版 世界大百科事典 「扁鵲」の意味・わかりやすい解説

扁鵲 (へんじゃく)
Biǎn què

中国,《史記》に伝記のある周時代の名医。生没年不詳。姓は秦,名は越人で,渤海郡(いまの河北省)の人であるが,弟子とともに諸国を診療してまわり,扁鵲という名は趙の国に行った時に名のったという。彼は広範囲の病気を鍼(はり)や薬物などで治療しているが,脈摶による診断をもっとも得意としたという。《史記》には趙簡子が人事不省に陥った時に蘇生をいいあてた話,虢(かく)の太子が尸厥(しけつ)という病気にかかり死んだと思われていた時に,鍼石と熨法などを用いて治癒させた話,斉の桓公顔色を見ただけで病気の所在を知った話などが記載されている。しかし同じ書の該当人物の伝にその記録がないことと彼らの生存年代が数百年にわたっていることから,扁鵲は実在の人物ではなくて数種の伝説をまとめたものであろうとか,山東地方にあった鳥の伝説が変化したものであろうなどの説がある。《難経(なんぎよう)》の撰者であるという説もあるが,それは彼の名声に仮託したものである。後世,名医の代名詞としても使われた。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「扁鵲」の意味・わかりやすい解説

扁鵲
へんじゃく

生没年不詳。中国、戦国時代(前403~前221)の名医で、中国医学の祖師とされる。渤海(ぼっかい)郡(河北(かほく)省)の人。姓は秦(しん)、名を越人(えつじん)という。趙(ちょう)国にいたころ扁鵲とよばれた。伝記は『史記』中にみえ、それによれば、各地を遍歴し、諸侯や貴族の治療をはじめ、土地の風俗に従って、婦人を尊重する地では帯下(たいげ)医、老人を敬愛する地では耳目痺(じもくひ)医、小児を愛護する地では小児医として治療した。診断に精通し、とくに脈診に優れていた。治療法は鍼(はり)・湯薬(とうやく)・湿布(しっぷ)などを用いた。秦(しん)国の太医令李(りき)が技術的に勝る扁鵲を殺害した。

 著作は、『漢書(かんじょ)』芸文(げいもん)志に『扁鵲内経』9巻・『外経』12巻と記載されているが、亡失して現存しない。

[山本徳子]

『藪内清著『科学史からみた中国文明』(1983・日本放送出版協会)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「扁鵲」の意味・わかりやすい解説

扁鵲
へんじゃく
Bian-que; Pien-Ch`üeh

中国,戦国時代の名医。姓は秦,名は越人。渤海郡鄭の人。長桑君の弟子で,その医書と秘伝の口伝を受けたという。春秋時代の 虢 (かく) の太子の急病を救って名を得たという。その伝説は前8~7世紀から前4世紀にわたっており,定かでない。耆婆 (きば。古代インドの名医) と並んで,名医の代名詞とされる。

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百科事典マイペディア 「扁鵲」の意味・わかりやすい解説

扁鵲【へんじゃく】

中国,周時代の伝説的名医。《史記》によれば,姓は秦,名は越人。長桑君という老人に医術を学び,諸国を遊歴,【かく】の国の太子を死からよみがえらせた。耆婆(きば)と並称される。

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