左右両手に持った方形の旗と身体とによって定められた形象を示して通信する方法。視認できる範囲でのもっとも簡単な交信方法といえる。旗を通信手段として用いること自体は古くから行われていたと思われるが,旗と身体とによってつくられる一定の形象で,文字あるいはモールス符号を示す現在のような手旗信号が使用されるようになったのは19世紀に入ってからのことである。現在,日本で使用されている手旗信号は,国際信号書によるものと〈日本船舶信号法〉によるものとの2方式に大別される。
国際信号書によるものにはセマホアsemaphore信号法とモールス信号法があり,両方法とも同色の2枚の手旗によるが,使用する形象と交信法は異なっている。セマホア法ではアルファベット26文字と交信に必要な2個の記号との計28個の形象が,両手旗の位置関係で表され,それをもって平文(話言葉)で交信する。送信速度は1語5字として毎分8語ないし12語が適当とされている。この方法は,18世紀の終りフランスで陸上間の通信に,柱につけた腕木の傾きを利用したのがそもそもの始まりで,現在でも旗の代わりに腕木を用いる場合もある(字の表示方法は同じ)。モールス法では使用する形象は5個であるが,各語あるいは符号の各文字,数字を,短符と長符との組合せでできているモールス符号に置き換えて送信する。やむをえない場合は,徒手あるいは片手で送信してもよい。送信は平文とも国際信号書の符号とも規定はないが,これはモールス法がとくに緊急な場面で意志の疎通を図るための交信手段となることを想定したことによる。
〈日本船舶信号法〉によるものは,左手に白色手旗,右手に赤色手旗を持って交信する。かたかなを1~3個の形象(原画という)によって表すもので,受信者側から見てだいたいかたかなに近い形が描かれるので,日本人にとってはわかりやすい(図)。平文で交信され,送信速度は毎分55字が標準である。
執筆者:平井 顕
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通信法の一種。両手に旗を持って直立し、旗をあげて形づくった形象によって文字を相手方に伝え、互いに意志の伝達を行う方式の信号法。和文通信に適した日本船舶信号法と、国際的にローマ字またはモールス符号を送って通信しあう国際信号法とがある。電波や光による通信法が発達した現在でも、遭難などの最悪状態においては最後の手段として役にたつことから、公式に通信手段として採用されている。このため、旗を持たずに手だけでも実施しうることになっている。
日本・国際とも信号法としては、(1)呼出し、(2)応信、(3)送信、(4)消信、(5)終信の方式で行う。ただしその方法は同一ではない。日本方式の送信は、相手方から見て片仮名の文字が書かれるのを読む形で行われる。たとえば「イ」を送る場合には、第一挙動で「ノ」の形をとり、第二挙動で「|」の形をとる。また「キ」を送るには「=」と「|」を組み合わせるというような方法がとられる。これに対して国際方式には、ローマ字を平文で送る方式とモールス方式の2種類がある。後者はいわゆるトン・ツーの符号を送るもので、手旗としてはトン(短符)とツー(長符)の二つの形だけですむが、送受信者ともモールス符号を知っている必要がある。またローマ字を平文で送る方式では、ローマ字全部の形象を互いに知っていなければならない。これをセマフォア信号ともいい、人間が形象をとるかわりに腕板二枚でも同じ形象をとることができる。
[茂在寅男]
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