改訂新版 世界大百科事典 「技術提携」の意味・わかりやすい解説
技術提携 (ぎじゅつていけい)
二つまたは三つ以上の企業間で,一方が他方に対して技術(特許権,ノウ・ハウ,図面,技術指導など)を供与することによって,または互いに技術を供与し合うことによって,継続的な関係が成立している場合に,それら企業間に技術提携が存するという。法律的には,特許またはノウ・ハウについての実施契約ないし実施許諾契約の形がとられ,これらを一般に技術提携契約と呼んでいる。すなわち,技術の供与者が相手方のためにその実施権を設定することを約し,相手方がこれに対し対価の支払を約することを内容とする契約である。通常,一定の期間(おおむね5~15年)につき,決められた実施料(ロイヤルティroyalty)が支払われる。また技術提携が行われる場合には,同時に企業間に資本提携が行われるケースも多い。技術を供与する企業がその供与を受ける企業の株式を所有する資本参加や,参加諸企業が出資して合弁会社を設立し,この会社を通じて共同でその技術を実施するという形である。当事者間に継続的な関係が成立するためには,技術自体はこれを供与する企業の手に留保しながら,相手の企業に対してその実施権を設定することが必要だからである。
日本企業と外国企業の技術提携は1960年代前半に急増したが,そのほとんどが外国企業からの技術導入を内容としていた。60年代~70年代初頭の高度成長の原動力は,民間における旺盛な設備投資であり,その契機をなしたのは技術革新であった。この技術革新のうち多くが,技術提携による先進外国技術の導入によってもたらされたのである。日本企業から外国企業へ技術が供与される技術提携は,発展途上国に対しては早くから行われていたが,対先進国のものは80年代になってから増加し,貿易摩擦回避の手段ともなっている。また先端技術の開花や企業の多角化を背景とし,国内企業相互間の技術提携も増加の傾向にある。
執筆者:田中 隆之
法律
技術提携には法的にみていくつかの形態がある。第1は,企業間の特許またはノウ・ハウのライセンス(使用権の付与)契約がある。これには,ある企業が他の企業に対して特許またはノウ・ハウのライセンスを与える場合(一方的ライセンス),二つの企業が相互にライセンスを与え合う場合(クロス・ライセンス)および三つ以上の企業がライセンスを与え合う場合(多角的ライセンス)などがある。また,技術提携は合弁会社設立という形をとることもある。すなわち,技術提携に参加する諸企業が出資をして,共同子会社である合弁会社を設立し,この合弁会社に対して各社がおのおの有する特許,ノウ・ハウのライセンスを与えて,この会社がある製品の生産を行うという形である。さらに,この共同子会社が生産会社ではなく,研究開発会社であることもあろう。この場合には,ここで開発された技術は出資者である親会社にライセンスされることになろう。また,技術提携は,組合の結成という形をとるものもある。この場合には,複数の企業が集まって組合を結成し,これに特許やノウ・ハウなどの技術情報を出資してプールし,これを共同利用することになる。さらに,この組合は研究組合であることもあり,この場合には,共同技術開発が行われ,これらの成果を共同利用することになる。
執筆者:松下 満雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報