抗アルドステロン性利尿剤(読み)コウアルドステロンセイリニョウザイ

病院でもらった薬がわかる 薬の手引き 電子改訂版 の解説

抗アルドステロン性利尿剤

製品名
《エプレレノン製剤》
セララ(ファイザー
《スピロノラクトン製剤》
アルダクトンA(ファイザー)
スピロノラクトン(三和化学研究所、武田テバファーマ、武田薬品工業、辰巳化学、鶴原製薬、長生堂製薬、東和薬品、日本ジェネリック、日医工、ニプロ、富士フイルムファーマ、陽進堂)
ノイダブル(キョーリンリメディオ、杏林製薬
《トリアムテレン製剤》
トリテレン(京都薬品工業、大日本住友製薬)

 ナトリウムや水を体内にためるようにはたらくアルドステロン副腎ふくじんから分泌されるホルモン)の作用を抑える薬で、むくみ(浮腫ふしゅ)の解消のほか、血圧も下げます。しかし、その作用は弱く、単独でむくみや高血圧症を改善することはできません。ただ、カリウム排泄はいせつされるのを防ぐ効果があり、低カリウム血症を予防するためにほかの利尿剤と併用されます。


 代表的な薬であるスピロノラクトン製剤は、ナトリウムだけ排泄し、カリウムの排泄を抑えるので、おもにチアジド系降圧利尿剤、ループ性利尿剤などの使用によっておこる副作用の低カリウム血症を防止する併用剤として用いられます。エプレレノン製剤は、アルドステロン受容体に対する選択性が高く、女性様乳房、月経異常などの副作用が少ないマイルドな薬です。アンジオテンシン変換酵素阻害剤またはアンジオテンシンⅡ受容体拮抗剤、β遮断剤、利尿剤などの基礎治療を受けている慢性心不全にも使用されます。


 本態性高血圧症腎性じんせい高血圧症心性浮腫ふしゅうっ血性心不全)・肝性浮腫腎性浮腫、そのほかにスピロノラクトン製剤では、特発性浮腫原発性アルドステロン症悪性腫瘍しゅように伴う浮腫および腹水栄養失調性浮腫といった症状を改善するために使います。


①過敏症状(発疹ほっしんなどのアレルギー症状)や光線過敏症(皮膚の日光に当たった部分が赤くなる、かゆくなるなど)がおこることがあります。スピロノラクトン製剤では電解質異常(高カリウム血症、低ナトリウム血症、不整脈、全身倦怠感けんたいかん脱力)、急性腎障害、中毒性表皮壊死融解症、皮膚粘膜眼症候群が、トリアムテレン製剤では、急性腎障害が、エプレレノン製剤は、高カリウム血症がおこることがあります。このような症状がおこったら使用を止め、すぐ医師に相談してください。


②長期間続けて使用すると、代謝異常(低ナトリウム血症、高カリウム血症、アシドーシスなどの電解質異常)がおこることがあります。また、好酸球の増加や巨赤芽球性貧血が現れることがあります。


 副作用出現の有無をチェックするためにも、医師から指示された診察や定期的な検査は必ず受けてください。


スピロノラクトン製剤では、女性化乳房、性欲減退、多毛、月経不順、食欲不振、吐き気嘔吐おうと、口の渇き、だるさ、めまい、頭痛、手足のしびれ、神経過敏、うつ状態、不安感、ねむけなどが、エプレレノン製剤では、筋肉のけいれん、頻尿、消化不良、高尿酸血症、疲労、発疹、多汗、下痢、腹痛、便秘、高トリグリセリド血症、心悸亢進しんきこうしん、せき、感冒様症状、勃起障害、むくみ、無力症、胸痛、トリアムテレン製剤では、高カリウム血症などが現れることがあります。


 このような症状が現れたら、医師に相談してください。


①錠剤、細粒、カプセル剤で、食後の服用が原則です。夜間の睡眠が妨げられるのを避けるため、なるべく昼間に服用するといった方法もあります。


 1日の服用回数と服用時間・1回の服用量については、医師・薬剤師の指示をきちんと守り、かってに中止したり、増量・減量しないでください。


 使用中は、利尿効果が急激に現れることがあるので、脱水症状に注意し、続けて長期に服用する場合、医師から指示された診察や検査は必ず受けてください。


 また、服用するときは、十分な水で飲んでください。


②問診の際にあらかじめ、持病やアレルギーなどの体質・現在使用中の薬の有無を医師に報告するとともに、使用前に、薬の効果と副作用について医師・薬剤師からよく説明を聞き、指示された注意事項をきちんと守ってください。


 スピロノラクトン製剤では、この薬の成分に対して過敏症の病歴がある人、無尿、急性腎障害、高カリウム血症、アジソン病の人、エプレレノン製剤、タクロリムス製剤、ミトタン製剤を使用中の人は使用できません。必ず医師に報告してください。


 トリアムテレン製剤では、ほかに腎結石およびその病歴のある人、無尿、急性腎障害、高カリウム血症、ビタミンの一種である葉酸が欠乏していたり葉酸の代謝異常がある人、インドメタシン製剤、ジクロフェナク製剤を使用中の人は、医師に報告してください。


 エプレレノン製剤では、過去にこの薬で過敏症をおこしたことのある人、高カリウム血症、血清カリウム値が5.0Eq/Lを超えている人、微量アルブミン尿または蛋白尿を伴う糖尿病、重度の肝・腎機能障害の人、カリウム製剤、カリウム保持性利尿剤、イトラコナゾール製剤、リトナビル製剤、ネルフィナビル製剤などの薬を使用中の人には使えません。


③妊婦あるいは現在妊娠している可能性のある人は、あらかじめ医師に報告してください。この薬が使用できないこともあります。また、重い肝硬化症または脳動脈硬化症のある人、減塩療法を受けている人、軽度の腎機能障害、軽度から中等度の肝機能障害の人、高齢者、ほかの薬を併用している人は、医師と相談してから用いてください。


④乳児は電解質のバランスをくずしやすいので、医師の指示をより厳重に守って使用してください。


⑤めまいが現れることがあるので、車の運転や危険を伴う作業では注意してください。


⑥ほかの薬を使用する必要が生じたときは、使用前に必ず医師に相談してください。


 とくにほかの降圧剤カリウム剤と併用すると、作用が増強されて副作用がおこりやすくなります。


 また、トリアムテレン製剤は、インドメタシン製剤・ジクロフェナク製剤などの非ステロイド抗炎症剤と併用して急性腎障害が現れたという報告があります。

出典 病院でもらった薬がわかる 薬の手引き 電子改訂版病院でもらった薬がわかる 薬の手引き 電子改訂版について 情報

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