精選版 日本国語大辞典 「掛かり」の意味・読み・例文・類語
かかり【掛・懸・係・繋】
- 〘 名詞 〙 ( 動詞「かかる(掛)」の連用形の名詞化 )
- ① 女の髪の垂れ下がっている様子。髪の下がり具合。また、その髪。
- [初出の実例]「御ぐしのかかりはらはらときよらにて」(出典:源氏物語(1001‐14頃)若菜下)
- ② 世話になること。頼ること。また、頼りとするもの。
- [初出の実例]「我にしたがひたりしもの、十が九は亡び失ぬ。城もなし、かかりもなし」(出典:十訓抄(1252)一)
- ③ 倒れたり、落ちたりしないように、物や人を支えとめるもの。よりかかりやひっかかり。釣り針では、釣れた魚のはずれるのを防ぐための鐖(あぐ)をいう。
- ④ あるつながり。関係。かかわり。
- [初出の実例]「わるい者によりそえば、おのれとわるうなるぞ。よいかかりはえせぬぞ」(出典:玉塵抄(1563)一〇)
- 「かかりのない茶屋に行て」(出典:浮世草子・世間胸算用(1692)二)
- ⑤ ( 係 ) ある特定の事柄に関する仕事を受け持つこと。担当。また、それを受け持つ人や役目。あるいは、受け持っている場所。現在、官庁や会社などでは、多く、「部」「課」の下に置かれる部署の一つ。〔日葡辞書(1603‐04)〕
- ⑥ 物事を始めるきっかけ。手がかり。
- [初出の実例]「七本松から跡先に是迄伺ひ参りしが、あたまのかかりがどふもなく」(出典:浄瑠璃・傾城反魂香(1708頃)中)
- ⑦ 入り口。
- [初出の実例]「おざしきまでははばかりなりとて、かかりのきわにぞ立たりける」(出典:天正本狂言・鶏聟(室町末‐近世初))
- ⑧ ある期間のはじめ。
- ⑨ 物事を行なうのに必要な費用。入費。
- [初出の実例]「借米百石、是も万事かかり引て、七拾五石でわたし」(出典:浮世草子・好色二代男(1684)八)
- 「費用(カカリ)も二人で下宿するその半額で済まさるる」(出典:魔風恋風(1903)〈小杉天外〉後)
- ⑩ 分銅のことか。
- [初出の実例]「銖 カカリ」(出典:観智院本名義抄(1241))
- ⑪ 建物、庭などの造り。かまえ。
- [初出の実例]「此大門のかかりなどは、誠に今迄の寺々とは格別なもので御ざる」(出典:虎寛本狂言・鐘の音(室町末‐近世初))
- 「庭のかかり広けれども」(出典:人情本・英対暖語(1838)初)
- ⑫ 顔、姿、身なりなどの様子。外見による趣、感じ。
- [初出の実例]「枝をため葉をすかして、かかりあれと植置きし」(出典:車屋本謡曲・鉢木(1545頃))
- 「姿かかりまことにいつくしさたとへん方なし」(出典:御伽草子・文正草子(室町末))
- ⑬ 能楽、和歌、連俳などで、表現、あるいは表現の様式。また、表現からにじみ出る風情、情趣。
- [初出の実例]「詞ばのかかり、実に学生の歌と覚へて、をかしくこそ侍れ」(出典:米沢本沙石集(1283)五本)
- 「いかにも思ひ入たるすがたかかり肝要たるべし」(出典:風姿花伝(1400‐02頃)物学条々)
- ⑭ 蹴鞠(けまり)をするための場所。また、その垣に植えた樹木。普通は北東に桜、南東に柳、北西に松、南西に楓を植えた。
- [初出の実例]「はれてよしあるかかりの程をたづねてたちいづ」(出典:源氏物語(1001‐14頃)若菜上)
- ⑮ 能楽や近世邦楽で、囃子事(はやしごと)の初段の前に奏する部分。
- [初出の実例]「木の頭(かしら)にて獅子とらでんのかかりになり、此の道具よろしく廻る」(出典:歌舞伎・児雷也豪傑譚話(児雷也)(1852)二幕)
- ⑯ 囲碁で、隅に打った相手の石を攻めること。
- ⑰ ( 係 ) 文法上、句の陳述に働きを及ぼすこと。また、そういう働きをする助詞。→係助詞。
- [初出の実例]「係(カカリ)とは静辞のも・に・を・は・ば・の・が・ぞ・や・か・こそ等言詞動辞に繋け静辞に合せ等して上の意を下へ云係て」(出典:詞玉橋(1826‐46)一)
- ⑱ 釣りで、水中の障害物。根がかり。
- [初出の実例]「かかりといふのは〈略〉釣鉤(つりばり)を入れることも困難なやうなひっかかりがあるから、かかりと申します」(出典:幻談(1938)〈幸田露伴〉)