仏教書。3巻。鎌倉新仏教の興隆に対して、南都旧仏教復興運動の旗手の一人であった華厳(けごん)宗の明恵房高弁(みょうえぼうこうべん)が、法然房源空(ほうねんぼうげんくう)の主著『選択本願念仏集(せんちゃくほんがんねんぶつしゅう)』(略して『選択集』ともいう)を披読して、その邪見を反駁(はんばく)するために著したのが本書である。法然が称名(しょうみょう)念仏を浄土往生の正業とする立場に対して、そこに大乗仏教の発菩提心(ほつぼだいしん)の意義が欠けていることを、激しい口調で非難している。1212年(建暦2)に著されたが、翌年、明恵は『摧邪輪荘厳記(しょうごんき)』1巻を著して、さらにその論旨を補足した。
[柏木弘雄]
『鎌田茂雄・田中久夫校注「鎌倉旧仏教」(『日本思想大系15』1971・岩波書店)』
明恵高弁(みょうえこうべん)が1212年(建暦2)に著した念仏批判の書。明恵は法然の人格を尊敬していたが,その没後に刊行された「選択(せんちゃく)本願念仏集」を読み,邪見に満ちていると激しい批判を展開した。内容は,菩提心を失する過失,聖道門をもって群賊にたとえる過失の2項目からなる。のち「摧邪輪荘厳記」を著して「摧邪輪」を補った。「日本思想大系」所収。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
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