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政治的人間 せいじてきにんげんhomo politicus

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

政治的人間
せいじてきにんげん
homo politicus

富,知識などの社会的価値よりも権力を第一義的に追求する人間類型をいう。 H.ラスウェルフロイトの影響を受けて『権力と人間』でこのような政治的人間の性格形成を詳述した。それによれば,権力の追求は自己が受けた価値剥奪に対する補完であり,通常価値剥奪の傷跡が深ければ深いほど,補完欲求は強力になり,その補完が権力に向ったとき政治的人間が形成されるという。もとより価値剥奪された人間すべてが権力追求者としての政治的人間になりうるのではなく,条件が必要である。すなわち自己充足されない渇望を家庭などの第1次サークルから公共の目標に転位する機会が存在すること,公共利益の名においてこの転位を合理化,正当化する機会が存在すること,そして権力過程に適応した技能が獲得されていることである。彼はまた,政治過程におけるパーソナリティを扇動型と行政型に大別した。政治社会学者の S.M.リプセットは,『政治のなかの人間』のなかで一般の人々の政治的行動と心理を分析し,ごく一般の人々の行動にも政治的側面があることを示した。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

政治的人間
せいじてきにんげん
political man

政治学の用語で、政治的存在としての人間をいう。古代ギリシアのアリストテレスは人間をポリス的動物とよんだ。人間は、他者との協力なしに自分ひとりでは片時も生きていけない弱い存在である。しかし同時に、他者からのいっさいの拘束を排除して思いのままに生きたい自由を求める存在でもある。このため、人間は社会を構成して他者との協力関係を維持すると同時に、互いの相対立する利害の調整に努めてきた。しかし、社会が発展してある一定の規模に到達すると、その社会を構成するすべての成員の利害にかかわる、その社会を維持し発展させるうえで必要な共通の公共的問題が発生し、これについての意思を決定し、問題解決を図ることが求められるようになる。この公共の問題に対する意思決定が政治である。この意味で、社会と政治は人間の生活にとって不可欠なばかりでなく、避けて通ることのできない存在といわなければならない。古代ギリシアにおいては、ポリスは人々にとって全体社会であると同時に、政治生活の繰り広げられる一つの完結した政治の世界でもあった。アリストテレスのこのことばは、人間が生きていくうえで社会と政治に対するかかわりがいかに深いかを喝破したものである。
 社会が発展して政治の発生をみるようになると、やがて、公共問題の処理を主たる任務とする統治機構、すなわち国家の誕生を促し、政治そのものを自己の職業とする政治家やこれを助ける官僚が生まれるようになる。その結果、このような政治発展はその社会のすべての成員を政治的意思決定の対象としながらも、政治家や官僚以外の成員を政治的意思決定から排除するという事態を生み出す。ここから、自己の利害にかかわる政治的意思決定への直接間接の政治参加を求める政治的権力闘争が発生する。デモクラシーとは、このような政治的意思決定が、その決定の対象となるすべての社会成員の参加の下に、彼らの間から選出された代表によってなされ、その代表はその意思決定の結果に対し、つねにすべての社会成員に対して政治的責任を負うことを制度的に義務づけられた政治システムにほかならない。このような社会成員の政治的意思決定は、国家や国際社会、地方自治体といった公的政治制度においてばかりではなく、地域社会やさまざまな団体内部においてもなされているのである。このような政治と離れて人間は人生を送りえないという意味で、人間は政治的存在たらざるをえないのである。[堀江 湛]

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