労働条件の改善や経済的社会的地位の向上をめざす労働組合として組織された教員の団結体。しかし,本来教職員は父母,国民の信託にこたえて青少年の学習と発達を保障することをその社会的責務とするため,いわゆる労働組合的な諸運動だけでなく,自主的創造的な教育活動の展開やその発展を保障すべき教育政策への発言,関与の役割をもつ専門職の団結体でもある。ただし,現在の日本の教職員組合は,私立学校関係を除いて,労働組合法の適用を受けない,とされている。
教職員組合は,19世紀の後半からヨーロッパ諸国で結成されたが,労働者としての意識にもとづく活動を始めるのは第1次大戦後である。イギリス教員組合National Union of Teachers(NUT)は,最初は同業組合的性格のものとして1870年に組織されたが,第1次大戦後に組織を拡大し,教職員の団結と地位の向上,教育制度の充実などを目ざして教育政策に影響を与えてきた。71年に結成されたドイツ教員組合Deutsche Lehrervereinも,ワイマール革命後にその初期の同業組合的性格を脱皮し,労働組合として政治闘争も展開した。フランスにおいては中等教員の組織化(1897),初等教員の組織化(1902)が同業組合的なものとして行われるが,第1次大戦後の1924年,公務員および知的専門的職業人の団結権が法律上認められるなかで,労働組合として団結し,教員の生活や地位の安定と教育の民主化,ファシズムに反対する運動を展開した。アメリカでは第1次大戦中の1916年に,全国組織としてアメリカ教員組合連盟American Federation of Teachers(AFT)が組織され,アメリカ労働総同盟に加盟し,賃金や労働条件,教育条件の改善を目ざしてたたかった。ロシアでは1905年に教育の民主化諸要求をかかげた非合法の全ロシア教員組合が組織されて弾圧下で活動したが,十月革命に反対して解散させられ,国際主義者教員組合のイニシアティブで全ソ教育・科学労働者組合が組織された。日本においても第1次大戦後の19年に日本教員組合啓明会(啓明会)が組織され,さらに小学校教員連盟や全日本教員組合準備会をへて30年に非合法の日本教育労働者組合が結成され,教員の待遇改善や視学制度の廃止,帝国主義戦争反対をかかげてたたかったが,33年長野県での教員検挙事件を境に組織的な運動は解体していった(プロレタリア教育運動)。
今日ではほとんどすべての国で教職員組合あるいはそれに代わる教員団体が組織されているが,その社会的役割,法制上の地位,全国組織の性質,全労働者組織との関係,政治的立場など,社会体制により,国により,さらに同一国内でもきわめて多様である。
国際的には,ロシア革命後の全世界的な労働運動の高まりのなかで組織された教育労働者インターナショナルEducational Workers International(略称,エドキンテルンEduc-Intern,1922結成)が,ヨーロッパおよび中南米諸国,日本の運動に影響を与えたほか,国際労働組合連盟の教員インターとして組織された国際教員組合書記局の活動がヨーロッパ各国に影響を与えた。第2次大戦後,それぞれ世界教員組合連盟Fédération Internationale Syndicale del'Enseignement(FISE,1946結成),国際自由教員組合連盟International Federation of Free Teachers Union(IFFTU,1951結成)となり,前者は世界労連系,後者は国際自由労連系として活動してきた。日本教職員組合(日教組)は後者に加盟するとともに前者とも一定の友好関係をもち,また日本高等学校教職員組合(日高教)は前者に加盟している。そのほかアラブ諸国が組織するアラブ教員組合連盟Federation of Arab Teachers(FAT),および中南米諸国が組織するラテン・アメリカ教員総連合Confederación de Educadores Americanos(CEA)が独自の地域組織として活動している。また,ヨーロッパ中心の戦前からの伝統をもつ国際教員団体連盟International Federation of Teachers Association(IFTA,1926結成),国際中等教員団体連盟Fédération Internationale des Professeurs de l'Enseignement Secondaire Officiel(FIPESO,1912結成)があり,それらを構成団体にふくむ世界教育者団体総連合World Confederation of Organizations of the Teaching Profession(WCOTP,1946結成,51改称)が,日教組などの教職員組合も加盟する国際教職員団体として活動してきた。しかし,ベルリンの壁崩壊(東西ドイツの統合)に象徴される東欧の激変のなかで,FISEの活動は弱体化し,他方,1993年にIFFTUとWCOTPが新しい統一国際組織として教育インターナショナルEducation International(EI)を結成した。日教組はこれを支持して加盟し,日高教は加盟せず,独自の交流・協力を進めている。
→日教組
執筆者:深山 正光
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…日本教職員組合の略称。1947年6月に結成された都道府県単位の教職員組合の連合体。…
※「教職員組合」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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