文字・活字文化振興法(読み)もじかつじぶんかしんこうほう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「文字・活字文化振興法」の意味・わかりやすい解説

文字・活字文化振興法
もじかつじぶんかしんこうほう

豊かな文字活字文化のための施策を総合的に推進するための法律。平成17年7月29日法律第91号。近年国民の活字離れが進み、また読解力や文章表現力が急速に低下しているため、こうした傾向に歯止めをかけることを目的に、与野党286名の国会議員からなる活字文化議員連盟において法案がまとめられ、2005年(平成17)7月に成立した。

 同法は、活字などの文字を用いて表現されたもの(文章)を読んだり書いたり出版する活動、または出版物などの文化的所産を「文字・活字文化」と定義している。そして、この文字・活字文化の恵沢をすべての国民が生涯にわたり平等に享受できる環境を整備すること、国語が日本文化の基盤であることに配慮すること、学校教育で言語力を高めていくことを基本理念とし、国や地方自治体はこの理念にのっとり、文字・活字文化の振興に関する施策を総合的に策定し、実施する責務を有することを規定している。

 活字文化議員連盟は、具体的な施策を「法施行に伴う施策の展開」としてまとめ、地域における振興(0歳児に絵本を贈る運動である「ブックスタート」の普及による子育て支援、本の読み語り支援、読書アドバイザーの育成、移動図書館の普及・拡充、公共図書館の計画的な設置等)、学校教育における施策(読書指導の充実、小規模校への司書教諭の配置、図書整備費への支援、新聞を使った教育活動の充実等)、出版活動への支援(文字・活字にかかわる著作物再販制度の維持、学術的価値を有する著作物の振興・普及、翻訳機会の少ない国々の著作物の翻訳、世界各地で開催されるブックフェア等国際文化交流の支援)などを推進するよう求めている。なお、同法で読書週間初日の10月27日を「文字・活字文化の日」として制定した。

[編集部]

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百科事典マイペディア 「文字・活字文化振興法」の意味・わかりやすい解説

文字・活字文化振興法【もじかつじぶんかしんこうほう】

国民が地域,学校,家庭などにおいて豊かな文字・活字文化を享受できる環境を整備すること,学校教育課程を通じて読む力・書く力など言語に関する能力を涵養することなどを基本理念として制定された。2005年7月公布・施行。法制定に伴い,超党派の国会議員が組織する活字文化議員連盟は,国・行政・民間が展開すべき施策として,(1)公立図書館の設置基準を自治体単位から人口比に改善すること,公立図書館における学術・研究書等の整備充実や,専門職員・読書アドバイザーの配置の推進(地域における文字・活字文化の振興),(2)読書指導の充実,図書整備費の交付税措置の充実・予算化,国語教育の充実(学校教育に関する施策),(3)著作物再販制度の維持,著作者および出版者の権利保護の充実,ブック・フェア等国際文化交流の支援(出版活動への支援)などを掲げている。10月27日が文字・活字文化の日とされ,関連法として〈子ども読書活動推進法〉(2001年施行)がある。

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図書館情報学用語辞典 第5版 「文字・活字文化振興法」の解説

文字・活字文化振興法

2005(平成17)年に公布された法律で,文字・活字文化の振興に関する基本理念を定め,国と地方公共団体の責務を明らかにし,その振興に必要な事項を示している.公共図書館関連では,必要な数の公立図書館の設置,司書の充実などの人的体制の整備,資料の充実,情報化の推進などを謳っている.学校図書館関連では,教育職員の資質向上,司書教諭などの人的体制の整備,資料の充実,情報化の推進など,大学図書館関連では,一般公衆への開放の推進,公開講座などの活動推進などをうたっている.また10月27日を「文字・活字文化の日」と定めている.文字・活字文化推進機構は,文字・活字文化振興に関わる諸活動を推進するために設立された公益財団法人である.

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知恵蔵 「文字・活字文化振興法」の解説

文字・活字文化振興法

2005年7月施行。同法の基本理念は、「すべての国民が生涯にわたり様々な場において等しく豊かな文字・活字文化の恵沢を享受できる環境を整備すること」。国と地方公共団体は、この振興施策を実施する責務を有し、公立図書館の必要な数の設置、学校教育における言語力の涵養、学術的出版物の出版支援などの施策を講じること、そのための財政上の措置も講じることを求めている。なお同法は読書週間初日の10月27日を文字・活字文化の日と制定。

(村上信明 出版流通ライター / 2007年)

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