新加制式(読み)しんかせいしき

改訂新版 世界大百科事典 「新加制式」の意味・わかりやすい解説

新加制式 (しんかせいしき)

戦国家法の一つ。阿波大名三好氏の家法。条数22ヵ条。制定者は,三好氏の家宰篠原長房岫雲)とされ,制定年代は,1562年(永禄5)3月より以降約10年のあいだに比定されている。法典としての形式は,神社・仏寺の規定を首条におくという中世の法典の形式を踏襲しているが,その条文配列など必ずしも整然としたかたちをとっていない。内容は,評定衆収賄の禁止,訴訟証人に関する規定などの訴訟・訴訟手続法,主人・被官関係についての条項地頭百姓の間を規定した条項,所領譲与などの相続法などがその主たるものである。この家法は,東国の戦国家法のように法によって新しい秩序を形成していこうとする性格は必ずしも強くないが,それだけに《御成敗式目》などの伝統的法秩序との関係や,一季奉公人の条項の存在にみられるような西国の大名の直面している現実的問題とその対応のありかたなどがよく知られる。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「新加制式」の意味・わかりやすい解説

新加制式
しんかせいしき

戦国期の分国法の一つ。古くは室町幕府法一種と考えられていたが、中田薫(かおる)によって阿波三好(あわみよし)氏の分国法であることが明らかにされた。1560年(永禄3)ころ、三好義賢(よしかた)(実休(じっきゅう))の家臣篠原雲(しのはらしうん)(または紫雲)が作成し、義賢の子長治(ながはる)(長春)が発布した。全文22条からなり、その内容は、相論・家臣の所領・年貢に関する規定、結党禁止の規定などからなり、幕府法継承の色彩が強く、室町幕府との結び付きの強い三好氏の性格を象徴している。

[大久保俊昭]

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「新加制式」の解説

新加制式
しんかせいしき

阿波国に拠った三好氏のもとで制定されたとされる法。現在の説では,三好義賢(よしかた)(実休)の没後,おそらく永禄年間に,子の長治のもとで家宰を勤めた篠原(しのはら)長房(岫雲(しゅううん))によって制定されたもので,現存本は22カ条からなる。第1条は神社・寺塔の崇敬保護をうたい,以下,主として相論の処理に関する規定,地頭の所領支配を律する規定が並ぶ。全体として「御成敗式目」の形式・内容を模倣した性格が強い。「中世法制史料集」所収。

出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報

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