19世紀末に、自然主義の行き詰まりを打開すべく新たな精神生活の建設を呼びかけたドイツの哲学者R・オイケンらの運動をいう。それによれば、17世紀以降、想像の国を離れて堅固な諸連関をもつ対象的世界の征服に向かうことにより、近代の学問・技術は成功したが、19世紀には、その成功の背後にある、霊なき自然に対立し自立する精神の概念は失われ、精神自身が自然過程に組み込まれているとする考えが有力となり、とくに社会・歴史形成において個人を過程の一通過点にすぎぬとする考えが支配的になる。しかるに、この無精神な現実主義に対する反動たるロマン主義は、気分的個人を万物の尺度とし、したがってその反道徳性からもうかがえるように、自然主義の一形態でしかない。ところで、かつて宗教と内在的理想主義が、おのおの人間の弱点と長所を強調しつつ、感覚的世界とは別の諸価値の世界を示していた。そこで、いまやふたたび精神生活を築き、そのうえ宗教をも位置づけて、社会文化志向と個人文化志向とに分裂した自然主義にかわらせようというのである。
[松永澄夫]
出典 旺文社世界史事典 三訂版旺文社世界史事典 三訂版について 情報
…ドイツの哲学者。19世紀中ごろの自然科学的唯物論や実証主義に対する批判として1870年代に生じた新理想主義に属する。ドイツ観念論の流れをくむとともに道徳主義的精神主義の立場に立つ彼は,物質文明が精神生活を貧しいものにしていることを批判して,高い精神的な生に至ることの必要性を強調し,ヨーロッパだけでなく日本でも一時多くの読者を得た。…
※「新理想主義」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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