オイケン(読み)おいけん(英語表記)Rudolf Eucken

日本大百科全書(ニッポニカ) 「オイケン」の意味・わかりやすい解説

オイケン(Rudolf Eucken)
おいけん
Rudolf Eucken
(1846―1926)

ドイツ哲学者。1月5日東フリースラントのアウリッヒに生まれ、ゲッティンゲン大学で学ぶ。1871年よりバーゼル大学で、1874年以後イエナ大学で教授歴任した。1908年ノーベル文学賞受賞。1926年9月15日イエナで没す。近代文明を批判して、「非人間的になった文化の営み」の鎖から、人間の心を解放して、新しい内的生、純粋な倫理的、精神的活動を創造する「新理想主義」を提唱した。この活動の目標は「共同の創造と生への本質的な統合」であり、共同的生をなおざりにする講壇哲学や知性主義は否定される。諸民族の精神的協力の促進に貢献し、中国の法学者張嘉森(ちょうかしん)(1887―1969)と『中国と欧州における生の問題』(1922)を編集出版した。主著に『人類の意識と活動における精神的生の統一』(1888)、『大思想家達の人生観』(1890)、『人生の意味と価値』(1908)、『人間と世界』(1918)などがある。

[小田川方子 2015年2月17日]


オイケン(Walter Eucken)
おいけん
Walter Eucken
(1891―1950)

ドイツの経済学者。有名な哲学者ルドルフ・オイケン(イエナ大学教授)を父に、また物理化学者アルノルト・オイケン(ゲッティンゲン大学教授)を兄にもつ。イエナ大学卒業後、ベルリン大学私講師、チュービンゲン大学教授を経て、1927年フライブルク大学経済学正教授に就任。50年3月20日ロンドン大学出講中に客死した。彼はもともとドイツ歴史学派の影響を受けていたが、第一次世界大戦後ドイツの超インフレーション解明が歴史学派の経済学では不可能とみてこれと決別した。彼はまず貨幣理論を、ついで資本および利子理論を研究し、ベーム・バベルクやウィクセルの成果をさらに展開した『資本理論の研究』(1934)は有名である。また主著『国民経済学の基本問題』(1940)では、各経済体制に固有な経済循環図式に応じた経済分析に重点を置き、政府は国民経済活性化のために政策的に自由経済を擁護すべきだと主張している。

 彼を中心として、アメリカのシカゴ学派にも比肩する競争原理・自由経済賛美のフライブルク学派が形成され、その思想は、第二次大戦後の西ドイツの経済復興にあたって指導的役割を果たした。

[島津亮二]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「オイケン」の意味・わかりやすい解説

オイケン
Eucken, Walter

[生]1891.1.17. イェナ
[没]1950.3.20. ロンドン
ドイツの経済学者。哲学者 R.オイケンの子。ベルリン大学,テュービンゲン大学を経て,1927年以降フライブルク大学経済学教授をつとめ,50年3月ロンドン大学の招きで渡英したが同地で病死。歴史学派や政治経済学が有力であったドイツにおいて理論経済学的関心をもち続け,みずから創刊した年鑑"Ordo"によって,早くからいだいていた自由主義的政策思想の普及をはかった。その市場経済の思想は第2次世界大戦後の西ドイツ経済政策の有力な指導理念となった。ネオ・リベラリズムの中心人物の一人。主著『国民経済学の本質』 Nationalökonomie-Wozu? (1938) ,『国民経済学の基礎』 Die Grundlagen der Nationalökonomie (40) ,『経済政策原理』 Grundsätze der Wirtschaftspolitik (52) 。

オイケン
Eucken, Rudolf Christoph

[生]1846.1.5. アウリヒ
[没]1926.9.14. イェナ
ドイツの哲学者。ゲッティンゲン大学で R.H.ロッツェに,ベルリン大学で F.A.トレンデレンブルクに学んだ。バーゼル大学 (1871~74) ,イェナ大学 (74~1920) の各哲学教授を歴任。体系的哲学者ではなかったが,生の哲学および理想主義の立場から著作を著わし,日本も含めて国外にも多くの影響を与えた。 1908年ノーベル文学賞受賞。主著"Der Sinn und Wert des Lebens" (08) ,"Können wir noch Christen sein?" (11) ,"Der Sozialismus und seine Lebensgestaltung" (20) ,"Individual and Society" (23) 。

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