日本人学校(読み)ニホンジンガッコウ

デジタル大辞泉 「日本人学校」の意味・読み・例文・類語

にほんじん‐がっこう〔‐ガクカウ〕【日本人学校】

海外に住む日本人の子女を対象とした学校で、現地の日本人会などが設置し、文部科学省の認可を受けたもの。全日制で、日本国内の小学校中学校と同等の教育を行う。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「日本人学校」の意味・わかりやすい解説

日本人学校 (にほんじんがっこう)

外国に在住する日本人子弟のために特設された学校。日本の学校制度の一環をなし,教員,教材,財政などの面で国の援助を受ける。1877年(明治10)に朝鮮の釜山に設立されたのが始まり。以降,日本のアジアへの軍事的・経済的進出の拡大に伴ってその数を増やし,1940年代前半には1万5000校あまりを数えるにいたった。制度的には,台湾,朝鮮など旧植民地における日本人学校と,中国,東南アジア各地など在外指定校制度(1906制定)によって保護された日本人学校に分類されるが,どこも日本国内と同じ教育を施し,現地の教育から隔絶されていた。これらは敗戦と同時に消滅した。

 戦後は1956年のバンコク日本人学校設立をもって始まるが,広く展開するのは70年代以降の企業による貿易活動が国際化してからである。外国に住む学齢児童生徒数は,71年の8662名から85年には3万8011名,91年には5万0773名に増え,90年代には5万人前後で推移している。海外子女教育ともいうが,戦前と比べると,子どもの居住地がアジア中心から全世界に広がり,また,教育形態も多様化している。日本人学校に通う者,現地校就学のかたわら土,日曜日に補修授業校に通う者,現地校のみに通う者に分かれ,1995年現在,それぞれ37%,37%,26%の割合である。日本人学校はアジア,中南米を中心に91校,補修授業校は欧米を中心に171校を数える。これらの学校には日本人教師が派遣され(1287人),生徒には教科書が無償給付される。文部省は海外子女教育のため240億円の予算を組んでいる(以上いずれも1995年)。日本人学校就学者および補修授業校通学者が増えているのが近年傾向で,これは帰国後の受験進学の問題に起因する。そのため,現地の生活や文化に目が向かなくなっているという問題点が生じている。他方,現地校在学者には帰国後日本の学校の教育方法に合わず不適応になり,またいじめられるなどの現象が起きている。なお,80年代以降,私学が欧米を中心に学校を設立する動きが生じ,立教英国学院など15学園に達している。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「日本人学校」の意味・わかりやすい解説

日本人学校
にほんじんがっこう

海外に勤務する日本人の子弟、すなわち海外子女のために海外に設置された小・中学校、または高等学校課程をもつ全日制の教育機関。北・中央・南アメリカ、アジア、ヨーロッパオセアニアアフリカ中近東の各地に95校が設置され(2020)、国内のカリキュラムに準じ、現地の特殊性を加味した教育を行っている。設置主体は現地の日本人会などであるが、施設の確保、教員の派遣、教科書・教材の供与などで国の援助を受けている。このほかに定時制の補習授業校(229校)もある。

[小林哲也]

『小島勝著『日本人学校の研究――異文化間教育史的考察』(1999・玉川大学出版部)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「日本人学校」の意味・わかりやすい解説

日本人学校
にほんじんがっこう
full-time schools for Japanese

海外において一定期間在留する日本人の,義務教育年齢に相当する子供の教育を目的として設置される学校。第2次世界大戦前,海外移住地などに「在外指定校」が設置されていたが,今日,海外子女教育,帰国子女教育との関連で扱われる日本人学校は,おもに 1960年代以降,日本の政治・経済的活動の国際化に伴って起ったものをさしている。基本的には,日本国内の学校教育に相当する教育を日本語で行う全日制の在外教育施設である。しかし定時制の補習授業校に通う者も多く,現地には企業や私立学校が設置した学校もある。また,かなりの子供が文部科学省補助による通信教育を受けている。国際学校や現地の学校との交流をはかったり,国際学級を設けたりして「開かれた日本人学校」が目指されている。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

知恵蔵 「日本人学校」の解説

日本人学校

親の海外勤務などに伴って海外に在住する日本人子女を対象に、当該国にある日本の企業関係の団体(商工会議所など)などが設置している全日制の学校。日本の正式な学校(1条学校)ではないが、日本から教員が派遣され、学習指導要領に準拠し、日本の検定教科書が使用され、卒業者は1条学校の卒業者とみなされる。海外では塾的な存在であるが、シンガポールなど国によっては、当該国の正式な学校に位置付けられている場合もある。現地の学校に通いながら、日本語の学習を中心にして土曜日などに授業を行う定時制の学校は補習校(補習授業校)と呼ばれる。

(新井郁男 上越教育大学名誉教授 / 2007年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

百科事典マイペディア 「日本人学校」の意味・わかりやすい解説

日本人学校【にほんじんがっこう】

海外在留邦人子女のために日本国内の義務教育段階の教育を行うことを目的として設置される教育施設。運営は日本人会が主体。日本政府の援助を受けながら,日本の教育法規に基づき,学習指導要領に準拠した教育課程を編成。同時に海外に所在している利点を生かし,現地との交流を図り,国際理解教育に努めている。1997年度現在,日本人学校は95校設置されており,約2万人が在籍し,補習授業校175校を含めると約5万人になる。

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

世界大百科事典(旧版)内の日本人学校の言及

【外国人学校】より

…ふつう送りだす側と迎える側の両面をもつ。日本の場合,送りだす側としては海外日本人学校を諸外国に特設し,迎える側としては在日外国人学校の設立を認めている。以下,後者について記すと,その歴史は明治の開国とともに始まる。…

※「日本人学校」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

プラチナキャリア

年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...

プラチナキャリアの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android