白魚(読み)シラウオ

デジタル大辞泉 「白魚」の意味・読み・例文・類語

しら‐うお〔‐うを〕【白魚】

サケ目シラウオ科の海水魚。内湾にすみ2~4月に川を上って産卵する。全長約10センチ。体は細長く、頭部が扁平で胴から尾にかけて側扁し、腹面に2列の黒点が並ぶ。半透明で、死後は白色不透明になる。冬に美味。シロウオとは別種。女性の白く細い指にたとえていう。「―のような指」 春》「雨に獲し―のかさ哀れなり/秋桜子

はく‐ぎょ【白魚】

白色の魚。
衣魚しみのこと。
ニゴイの別名。

しら‐お〔‐を〕【白魚】

しらうお」の音変化。
「―の小骨も抜いて食いそうなすました女めが」〈露伴・寝耳鉄砲〉

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精選版 日本国語大辞典 「白魚」の意味・読み・例文・類語

しら‐うお‥うを【白魚】

  1. 〘 名詞 〙
  2. シラウオ科の魚。体長一〇センチメートルくらいになる。頭は小さく上下に平たく、体の後方は縦に平たい。頭部その他にわずかに黒色胞がある以外ほとんど無色で生時は半透明に近く、死後は白色不透明になるためこの名がある。うろこは雄のしりびれ基底に二三~二九枚あるだけで、他の部分にはなく、また雌には全くない。脂鰭(あぶらびれ)がある。淡水の混じる沿岸域や汽水湖に生息し、一年目の早春に河を遡り、水草に卵を産み付ける。ハゼ科のシロウオに似ており、時にシロウオをシラウオと呼ぶ地方もあるが、両者は生時半透明の体をしている以外あまり類似点はなく別種。北海道から岡山県および熊本県までの各地の沿岸に分布。肉は淡泊で、吸物・すし種・酢の物にする。昔、佃島の漁師が白魚御用を江戸幕府から命ぜられ、隅田川の名産であった。《 季語・春 》 〔多識編(1631)〕
    1. [初出の実例]「鮎の子のしら魚送る別哉〈芭蕉〉」(出典:俳諧・続猿蓑(1698)旅)
  3. 女性の白く細い指をたとえていう語。
    1. [初出の実例]「琴は川白魚游ぐ美女の橋」(出典:雑俳・桜狩(1743))
  4. 魚「しろうお(素魚)」の異名。

はく‐ぎょ【白魚】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 白い魚。
    1. [初出の実例]「周の武王の舟にこそ、白魚は躍り入りたりけるなれ」(出典:平家物語(13C前)一)
    2. [その他の文献]〔史記‐周本紀〕
  3. 書物や衣類などに生ずる虫。しみ。
    1. [初出の実例]「白魚浮紙上、游泳九流中」(出典:菅家文草(900頃)五・壁魚)
    2. [その他の文献]〔爾雅‐釈虫〕
  4. 魚「にごい(似鯉)」の異名。〔水経注‐聖水〕

み‐ごい‥ごひ【白魚・

  1. 〘 名詞 〙 魚「にごい(似鯉)」の古名。
    1. [初出の実例]「 ミコヒ ミ 鯉属」(出典:色葉字類抄(1177‐81))

しら‐お‥を【白魚】

  1. 〘 名詞 〙 「しらうお(白魚)」の変化した語。《 季語・春 》 〔壒嚢鈔(1445‐46)〕
    1. [初出の実例]「洋銀の指輪を大事らしう白魚(シラヲ)のやうな指にはめ」(出典:われから(1896)〈樋口一葉〉四)

しろおしろを【白魚】

  1. 〘 名詞 〙 魚「しらうお(白魚)」の古名。《 季語・春 》 〔十巻本和名抄(934頃)〕

しろ‐いお‥いを【白魚】

  1. 〘 名詞 〙 魚=しらうお(白魚)〔色葉字類抄(1177‐81)〕

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日本歴史地名大系 「白魚」の解説

白魚
しろいお

中世、五島浦部うらべ島のうちにみえる地名。現宿しゆく浦郷うらごうの白魚に比定され、青方氏一族の白魚氏が佐保さほ浦とともに地頭の峰氏との間で相論となったことで知られる。文永二年(一二六五)「白魚弥二郎」は兄青方能高の所従を抑留したとして訴えられた(同年一〇月二〇日「六波羅問状案」青方文書、以下同文書)。弥二郎(白魚弘高・西仏)は同三年に上洛を命じられている(同年三月三日六波羅召文案)。同年一〇月異国警固博多番役を一五日間勤めている(同年一一月七日肥前国守護武藤経資覆勘状案)。この頃「しろいを」の古老百姓が守護所から地頭の先例の得分について尋ねられたのに対して、地頭である峰持と青方家高の知行の時代について、夏狩に二、三日ほど地頭に召使われたなどと答えている(年月日未詳百姓等連署起請文案)小値賀おちか島の地頭である峰氏(のちの平戸松浦氏)と、その代官(下沙汰職)の青方氏の間で浦部島の実質の支配権をめぐって対立があり、この守護所の問合せも関連するものであるが、家高(弘高・能高の父)の父尋覚(青方氏の始祖という)領主権を奪われて下沙汰職(地頭代)たることを余儀なくされていた。しかし家高は峰氏に断りなく子息に所領を分割譲与し(嘉元二年一一月日峰貞代長陳状案)、そのうち白魚・佐保を譲られた弘高は白魚氏を称するようになったが、地頭峰氏の支配下にあることに変りはなかった。

しかし弘高も、その子の時高(行覚)もしだいに峰氏に対抗して、独立しようとする態度をみせはじめたようである。弘安九年(一二八六)に弘高は中浦部白魚を白魚弥九郎盛高に譲っている(同年一〇月二日白魚弘高避状案)。また時高は同一〇年六月・一二月、正応元年(一二八八)一〇月・一二月、同四年六月と、筑前国姪浜めいのはま(現福岡市西区)の警固番役を勤め(弘安一〇年六月晦日肥前国守護北条為時覆勘状案など)、永仁六年(一二九八)には「五島白魚田地弐町」に課された姪浜の石築地役一尺一寸分を勤仕している(同年八月三〇日肥前国守護代平岡為尚覆勘状案)

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

動植物名よみかた辞典 普及版 「白魚」の解説

白魚 (シラウオ)

学名:Salangich‐thys microdon
動物。シラウオ科の回遊魚

白魚 (シロウオ)

学名:Leucopsarion petersi
動物。ハゼ科の魚

出典 日外アソシエーツ「動植物名よみかた辞典 普及版」動植物名よみかた辞典 普及版について 情報

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