日本紅斑熱(読み)ニホンコウハンネツ

朝日新聞掲載「キーワード」の解説

日本紅斑熱

春から秋に感染例が多く、野山での散策や農作業などをしている時に、リケッチア細菌に感染したマダニ類に刺されて発症する。2~10日の潜伏期間の後、高熱や発疹、リンパ節が腫れるなどの症状が出る。ツツガムシ病よりも重症化しやすいとされる。

(2012-04-26 朝日新聞 朝刊 三重全県 1地方)

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知恵蔵miniの解説

日本紅斑熱

日本紅斑熱リケッチアという細菌を保有するマダニに刺咬されることで起こる感染症。2~8日ほどの潜伏期を経て、頭痛、高熱、全身倦怠感などが生じ、紅色の発疹が四肢から体幹部に向かって現れる。予防接種はなく、治療には抗菌剤が用いられる。人から人へ感染することはないが、治療が遅れると重症化して死に至る可能性があるため、早期発見が重要とされる。1984年に徳島県で初めて患者が報告されて以来、西日本を中心とする各地で症例が確認されている。

(2019-5-21)

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

日本紅斑熱
にほんこうはんねつ

紅斑熱リケッチアの一種であるリケッチア・ジャポニカRickettsia japonicaを病原体とするリケッチア症の一種。マダニが病原体を媒介するため、マダニ感染症の一種でもある。この種の感染症は全世界でみられ、北米のロッキー山紅斑熱のほか、地中海紅斑熱やオーストラリアのクイーンズランドマダニチフス、シベリアマダニチフスなどが知られている。日本紅斑熱は1984年(昭和59)に馬原文彦(まはらふみひこ)(1941― )によって初めて報告され、その後四国や九州を中心とする西日本の太平洋側の温暖な地域に多く発症例が報告されている。マダニは成虫だけでなく幼虫や若虫も吸血性で、野山の植物の葉陰に生息し野生動物や家畜にも寄生するため、春から秋にかけての活動期に野外で感染することが多い。日本紅斑熱の病原リケッチアはキチマダニやフタトゲチマダニなどが媒介すると考えられているが、ほかにヤマトマダニなどの媒介も疑われている。
 発症までの潜伏期間は2日~1週間ほどで、高熱と特徴的な発疹(ほっしん)、およびダニによる刺し口が認められることが特徴的な3徴候とされ、ほかに全身倦怠(けんたい)感、頭痛や悪寒(おかん)などを伴う。発疹は手足や手掌など四肢末端部および顔面などに出現する特徴があり、さらに求心性に広がる。治療はテトラサイクリン系抗菌薬が第一選択で、ニューキノロン系薬も一定の効果があるとされる。[編集部]

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内科学 第10版の解説

日本紅斑熱(リケッチア感染症)

概念・病因
 Rickettsia japonicaを保有するマダニに刺咬されて感染し発症する.日本紅斑熱は,1984年に徳島県の馬原らにより患者がはじめて報告され,近年では,年間100名以上の症例が報告され,増加傾向にある.発生時期はマダニの活動期にあたる夏季が中心であるが,地域差があり,春季,秋季に患者が多く発生する地域もある.関東以西の比較的温暖な地域に限られているものの,人の移動などから,発生地以外でも患者に遭遇する例が増えている.
臨床症状
 つつが虫病と同様に発熱,発疹,刺し口を3主徴とする.潜伏期間は2~8日とつつが虫病よりやや短く,頭痛,40℃前後の発熱,全身倦怠感をもって発症する.発疹は顔面や四肢末端部にやや多く出現する傾向がある.手掌や足底部にもみられることが特徴である.重症化例では,発疹は出血性となる.刺し口はやや小さく,確認できない症例もある.リンパ節の腫脹はまれである.検査所見はつつが虫病とほぼ同様である.尿蛋白,潜血軽度陽性などもみられる.治療が遅れると死亡する例もある.重症例では,DICや多臓器不全,また急性感染性電撃性紫斑病(acute infections purpura fulminans) も報告されている.
診断
 IFAやIPによる血清診断,つつが虫病と同様の臨床材料を用いてPCRによる特異的遺伝子の検出が行われる.Weil-Felix反応はOX2またはOX19が陽性となる.鑑別診断はつつが虫病やその他のリケッチア症も考慮する.
治療
 テトラサイクリン系抗菌薬が著効を示す.また,ニューキノロン系抗菌薬の併用が有効であるとの報告もある(つつが虫病には無効)が,β-ラクタム系抗菌薬,アミノグリコシド系抗菌薬は無効である.予防には,つつが虫病と同様にベクターとの直接的な接触を避けることが重要である.[安藤秀二]

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