内科学 第10版 「ロッキー山紅斑熱」の解説
ロッキー山紅斑熱(リケッチア感染症)
病原体
Rickettsia rickettsii.
分布・感染経路・臨床症状
本来北アメリカのロッキー山脈地方の地方病であるが,最近はアメリカ東海岸地方で患者が多発している.わが国には存在しない.小齧歯類あるいはイヌをリザーバーとするRickettsia rickettsiiがベクター(マダニ類)を介して人に感染する.
潜伏期の後,突然悪寒とともに発熱し,激しい頭痛,筋肉痛,関節痛,衰脱感を伴う.約2~3週間高熱が持続した後解熱する.発疹は90%以上に認められる.重症では髄膜炎ないし髄膜脳炎を併発し不穏,興奮,不随意運動,痙攣,片麻痺,難聴,意識障害などを起こし,腎不全,間質性肺炎,循環器症状も高度となる.
検査成績
血液所見は正常のことが多いが,初期には白血球数減少,後に軽度増加をみることがある.髄液は正常または軽度細胞増加を示す.
診断
初期には臨床症状による鑑別は困難である.ダニ咬傷の既往が参考となる.血清学的診断法(間接蛍光抗体法,ELISA法,Weil-Felix反応)が有用である.
治療
つつが虫病に準ずる.[三浦義治・岸田修二]
■文献
川並 透,溝口次郎,他:オリエンチヤツツガムシ.日本臨牀 領域別症候群シリーズNo26神経症候群―その他の神経疾患を含めて―,pp532-534,日本臨牀社,大阪,1999.
Walker DH, Raoult D : Rickettsia and other spotted fever group Rickettsias: Rocky mountain spotted fever and other spotted fever. In :Principles and Practice of Infectious Diseases, 6th ed (Mandell GL, Bennett JE, et al eds), pp2287-2295, Elsevier Churchill Livingstone, Philadelphia, 2005.
ロッキー山紅斑熱(リケッチア感染症)
Rickettsia rickettsiiによる急性感染症である.米国における代表的な紅斑熱群リケッチア症で,リケッチアを保有するマダニに刺されることで感染する.
臨床症状
潜伏期間は2~14日,頭痛,全身倦怠感,高熱などを伴って発症する.刺し口は通常みられない.高熱とほぼ同時に紅色の斑丘疹が手足などの末梢部から求心性に多発し,部位によっては点状出血を伴う.リンパ節腫脹がときにみられる.CRP陽性,血小板減少,肝機能異常などは日本紅斑熱と同様で,治療が遅れると中枢神経系症状,不整脈,乏尿,ショックなどの合併症を呈し,死亡率も高い.
診断
発症時期はダニと接触する春~秋までが多く,受診直前の米大陸への渡航や現地活動に関する情報が重要である.IFA,IPなどによる抗体の検出,発疹部皮膚生検を用いたPCRなどが実施される.
治療
テトラサイクリン系抗菌薬を使用する.[安藤秀二]
出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報