日本開化小史(読み)ニホンカイカショウシ

デジタル大辞泉 「日本開化小史」の意味・読み・例文・類語

にほんかいかしょうし〔ニホンカイクワセウシ〕【日本開化小史】

歴史書田口卯吉著。6巻6冊。明治10~15年(1877~82)刊。ギゾーらのヨーロッパ文明史論の影響のもと、独自の観点から古代から明治維新までの歴史社会進化に重点を置き叙述したもの。

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精選版 日本国語大辞典 「日本開化小史」の意味・読み・例文・類語

にほんかいかしょうしニホンカイクヮセウシ【日本開化小史】

  1. 史論。六巻。田口卯吉著。明治一〇~一五年(一八七七‐八二)刊。古代から江戸幕府滅亡までの日本歴史を概説したもの。バックルの「英国文明史」やギゾーの「ヨーロッパ文明史」などの影響のもとに、経済文明開化、社会進化の法則を統一的にとらえ、近代史学に啓蒙的役割を果たした。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「日本開化小史」の意味・わかりやすい解説

日本開化小史
にほんかいかしょうし

田口卯吉(たぐちうきち)(鼎軒(ていけん))が著した啓蒙(けいもう)主義的文明史論に基づく日本通史。1877年(明治10)9月から82年10月までに和装六冊本として刊行。のち洋装一冊本となり、全集や文庫などにも収められている。バックルやギゾーらのヨーロッパ文明史論、福沢輸吉(ふくざわゆきち)の文明論の影響下に、新井白石(あらいはくせき)の『読史余論(とくしよろん)』などの論述を継承して、神代から徳川期の治世までの日本史の展開を13章にまとめている。「貨財」(経済)を歴史の原動力として、政治、経済、文学、宗教などの各分野を総合的に考究した初めての史書で、田口のその後の歴史への傾倒とともに注目すべきものがある。

[松島榮一]

『『日本開化小史』(岩波文庫)』

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改訂新版 世界大百科事典 「日本開化小史」の意味・わかりやすい解説

日本開化小史 (にほんかいかしょうし)

田口卯吉著。和装本6巻。1877年から82年にかけて刊行。ギゾーバックルらの文明史の影響をうけつつ,〈凡そ人心の文野(すすめるすすまざる)は,貨財を得るの難易と相俟(あいまち)て離れざるもの〉とする歴史観で,神道の起源から江戸幕府滅亡までを13章構成で体系的法則的に叙述している。福沢諭吉の《文明論之概略》とともに,文明開化期の啓蒙史学を代表する歴史書。
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百科事典マイペディア 「日本開化小史」の意味・わかりやすい解説

日本開化小史【にほんかいかしょうし】

古代から江戸幕府の終末までを扱った啓蒙的文明史概説書。田口卯吉著。和装本は6巻で,第1巻は1877年9月刊。以下約半年ごとに刊行され1882年10月に完成。田口はフランスギゾーや英国の歴史家バックルの《文明史論》から影響をうけ,著述の意図を立てたという。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「日本開化小史」の意味・わかりやすい解説

日本開化小史
にほんかいかしょうし

田口卯吉著。和装6巻。 1877~82年刊。古代から江戸幕府終末までを,貨財の生産組織を基礎とする社会発展過程として体系的に述べたもの。イギリスの H.バックル,フランスのギゾーの文明史観を吸収して独自の見解を示し,日本近代歴史学の記念すべき著作とされる。『鼎軒田口卯吉全集』ほかに所収。

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「日本開化小史」の解説

日本開化小史
にほんかいかしょうし

田口卯吉の著した日本史論。1877年(明治10)巻之一を刊行,82年の巻之六に至る。神道の起源から江戸幕府の崩壊までを扱う。バックルの文明史やスペンサーの社会進化論を参考として,史学の目的を倫理的批判から因果関係の認識に切り替え,事件より社会全体の傾向に着目して,政体のみならず文化・経済の相関的な開化・発展を説明し,以後の史学に影響を与えた。「岩波文庫」所収。

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旺文社日本史事典 三訂版 「日本開化小史」の解説

日本開化小史
にほんかいかしょうし

明治前期,田口卯吉の歴史書
1877〜82年刊。6巻。ギゾー・バックルらの文明史学理論を学び,新井白石の『読史余論』などを参考にして,古代から明治維新までの日本の歴史を,経済と文化の関係に力点を置いて述べた。日本史学上の画期的業績の一つ。

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