田口卯吉(たぐちうきち)(鼎軒(ていけん))が著した啓蒙(けいもう)主義的文明史論に基づく日本通史。1877年(明治10)9月から82年10月までに和装六冊本として刊行。のち洋装一冊本となり、全集や文庫などにも収められている。バックルやギゾーらのヨーロッパ文明史論、福沢輸吉(ふくざわゆきち)の文明論の影響下に、新井白石(あらいはくせき)の『読史余論(とくしよろん)』などの論述を継承して、神代から徳川期の治世までの日本史の展開を13章にまとめている。「貨財」(経済)を歴史の原動力として、政治、経済、文学、宗教などの各分野を総合的に考究した初めての史書で、田口のその後の歴史への傾倒とともに注目すべきものがある。
[松島榮一]
『『日本開化小史』(岩波文庫)』
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田口卯吉の著した日本史論。1877年(明治10)巻之一を刊行,82年の巻之六に至る。神道の起源から江戸幕府の崩壊までを扱う。バックルの文明史やスペンサーの社会進化論を参考として,史学の目的を倫理的批判から因果関係の認識に切り替え,事件より社会全体の傾向に着目して,政体のみならず文化・経済の相関的な開化・発展を説明し,以後の史学に影響を与えた。「岩波文庫」所収。
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