日本大百科全書(ニッポニカ) 「日比翁助」の意味・わかりやすい解説
日比翁助
ひびおうすけ
(1860―1931)
実業家。わが国最初の百貨店三越(みつこし)の創始者。福岡県出身。久留米(くるめ)藩士の竹井家から日比家の養嗣子(しし)となる。1884年(明治17)慶応義塾卒業後、麻布(あざぶ)天文台を経て、89年福沢諭吉(ゆきち)の推挙でモスリン商会支配人となる。96年、中上川(なかみがわ)彦次郎の招聘(しょうへい)で三井銀行に入る。和歌山支店支配人、本店副支配人を経て、98年三井呉服店支配人に転じる。1904年(明治37)呉服店が三井直系事業から分離されるに及んで、その債権・債務を継承して株式会社三越呉服店設立の中心となり、専務取締役に就任した。「デパートメントストアの実現」を広告文にうたい、イギリスの百貨店ハロッズを範とし、越後(えちご)屋以来の薄利多売精神を理念として経営にあたった。多種多様な商品、サービスの提供、斬新(ざんしん)な広告宣伝活動、壮麗な店舗、各種の催し物など、百貨店経営の基礎を築いた。13年(大正2)会長となり、18年取締役を退任した。
[前田和利]
『星野小次郎著『日比翁助』(1951・創文社)』