ある者が一定の戸籍に登載されることをいう。現行法上の用語としての入籍には,次の2種があると通常は説明されている。第1は,生まれた子が出生届に基づいて母ないし父母の戸籍に登載されること(これを原始的入籍という),第2は,婚姻,養子縁組,離婚,離縁などの届出による親族法上の身分変動にともない,当事者が従前の戸籍から別の戸籍に登載されること(これらを移転的入籍という)である。しかし条文上,もっとも明確に〈入籍〉と規定されているのは,〈子の氏の変更〉(民法791条)にともなう入籍である(戸籍法98,99条)。それは,子が父または母と氏を異にするとき(たとえば両親の離婚,父の認知など)に,家庭裁判所に〈子の氏の変更〉審判(家事審判法9条1項甲類6号)を申し立て,その許可を得て親と同氏(同籍の効果も併有)にする場合,および成年に達した子が同じ手続で変更前の氏に復する場合の,〈子の改氏→入籍の制度〉をいう。この規定を第1とし,前述の二つを含む3種が法律上の入籍である。なお婚姻の場合,氏を改めない者(多くは夫)がすでに戸籍の筆頭に記載されている場合を除き,通常は夫妻ともに新戸籍を編製する形をとる。しかしこれも,従前の戸籍から新戸籍への移転が行われることから,移転的入籍に含まれる。
日常生活で頻繁に使われる〈入籍〉は,法律婚の成立の代用的用法としての入籍,および出生にともなう親の戸籍への入籍である。しかし法律婚の成立を〈入籍〉と表現することは,戸籍制度を持たない国では通用しない(欧米諸国は個人別身分登録制度を採用している)。入籍とは,沿革的には民法旧規定(明治民法)上の〈家〉制度の支柱としての戸籍制度に固有な用法である。旧法では,身分行為(婚姻など)の届出は,一定の〈家〉への入籍行為をともなった。そのほかに現行法にはなくなっているが,ある〈家〉への入籍それ自体を目的とした,親族入籍(旧民法737条)と引取入籍(738条)もあった。このように,旧法では,ある〈家〉の戸籍(家籍)に入籍されているか否かで,扶養,親権,相続など親族間の法律的効果が左右されたので,入籍は重要な問題であった。今日乱用,誤用されている〈入籍〉の用法は,旧法の規定およびそれによってつちかわれた意識によるものが,少なからずある。
→戸籍
執筆者:星野 澄子
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
ある者が既存のある戸籍に入ること。生まれた子が父母の戸籍に入るように、初めて戸籍に記入される場合(原始的入籍)と、養子縁組のようにある戸籍を出て他の戸籍に入る場合(移転的入籍)とがある。結婚の場合には、夫婦のために戸籍が新たに編製されるのが普通である(戸籍法16条1項)から、結婚によって妻が夫の氏にかわる場合やその逆の場合は入籍とはいわない。ただし、結婚の当事者のうちの一方がすでに戸籍の筆頭者であり、結婚後にその氏を称する場合には、他方当事者はその戸籍に入籍することになる(同法16条1項但書・同条2項)。
[高橋康之]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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