日米加漁業条約(読み)にちべいかぎょぎょうじょうやく

改訂新版 世界大百科事典 「日米加漁業条約」の意味・わかりやすい解説

日米加漁業条約 (にちべいかぎょぎょうじょうやく)

1952年5月に日本,アメリカ,カナダの間で調印された〈北太平洋公海漁業に関する国際条約International Convention for the High Seas Fisheries of the North Pacific Ocean〉の通称日米加三国漁業条約あるいは北太平洋漁業条約と呼ばれることもある。第2次大戦後,日本の漁業はいわゆるマッカーサー・ラインによってその活動の範囲を日本周辺の海域に制限された。この制限は,アメリカ太平洋岸の漁業関係者が戦前からの日本漁業の進出に対し脅威をもっていたことからとられた措置で,1952年4月,講和(平和)条約発効直前に撤廃され,日本の漁業者は公海で漁業ができるようになった。しかし,〈日本国との平和条約〉9条で,公海における漁業秩序維持を目的とした漁業協定締結のため,日本は希望する連合国と交渉を行うことが義務づけられた。しかも,講和条約発効から漁業協定ができるまでの間,日本漁船が無制限に進出することを警戒したアメリカ側の要請に応じて,1940年に操業していなかった漁場では自発的に操業しないことを約束する〈吉田=ダレス書簡〉が51年2月交換された。このような経過を踏まえて,52年に日本,アメリカ,カナダの3国をメンバーとする本条約が調印され,53年6月から発効した。

 この条約のもとでは,公海自由の原則に基づき,漁業資源の最大持続的生産性を図るために北太平洋漁業国際委員会を設けて科学的研究を行い,その結果必要な保存措置を決定し,各締約国が実施することとなっている。しかし,北米系のサケマスオヒョウ(および当初は一部のニシン)のように,すでに資源が最大限利用されている等の,条約で定められた条件を満たすとされた魚種については,従来漁獲実績のない締約国がそれらの魚種の漁獲を自発的に抑止するという〈自発的抑止の原則〉が適用されることとなった。また,〈抑止〉の対象となっていない魚種で2またはそれ以上の締約国が実質的に漁獲している魚種については,ある締約国の要請に基づき委員会が研究し,必要な保存措置を決定して勧告することとなった。その結果,日本のサケ・マス漁業は西経175度線以西に限定され,また,アラスカ湾における日本漁船によるオヒョウ(当初はアラスカ湾内ニシンも)の漁獲が禁止された。ところが,1977年2月にアメリカから200海里法(〈漁業専管水域〉の項参照)との不一致を理由に条約の終了が通告され,さらに条約の改正が提案された。このため,3国間で交渉した結果,内容を大幅に改めた条約改正議定書が78年に作成され,79年2月に発効した。新条約の主目的はサケ,マス等の遡河(そか)性魚種の保存措置を決定することで,抑止の原則の適用はなくなった。サケ・マス漁業には禁止区域,区域別操業開始日,母船隻日(母船隻数×操業日数)を組み合わせた規制措置が適用されることとなり,その結果,東経175度線以東(ベーリング海中央部の公海水域を除く)でのサケ・マス漁業は日米加3国が合意する場合以外は行わないが,以西のアメリカ200カイリ水域での操業は認められることとなった。サケ・マス類以外の魚種については,日米加3国以外の国も参加する新たな国際機関が設立されるまで,委員会で資源状態について科学的な調査および研究を行うこととなった。

 その後,88年よりアメリカ200海里水域での操業が全面的に禁止となった。さらに92年2月,日本・アメリカ・カナダ・ロシア4国で〈北太平洋サケ・マス保存条約〉が締結され,北太平洋公海でのサケ・マスの漁獲が禁止されるにいたった。
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百科事典マイペディア 「日米加漁業条約」の意味・わかりやすい解説

日米加漁業条約【にちべいかぎょぎょうじょうやく】

西経175°以東の北太平洋での漁業に関する日本・米国・カナダ間の条約。1952年締結。日本は同水域のサケ・マス,米加沿岸沖合のオヒョウ・ニシンなどの漁獲を自発的抑止という形で禁じられた。1977年米国の200カイリ水域設定に伴い日米漁業協定が,1979年には日米加漁業協定の改定議定書が発効。西経175°以西の米国200カイリ水域での日本のサケ・マス漁は認められたが,1988年以後は割当てゼロとなった。さらに1992年には日米加露4ヵ国が北太平洋サケ・マス保存条約を結び,北太平洋の公海でのサケ・マスの漁獲はすべて禁止された。
→関連項目漁業サケ・マス漁業日米漁業交渉

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「日米加漁業条約」の意味・わかりやすい解説

日米加漁業条約
にちべいかぎょぎょうじょうやく

北太平洋公海漁業条約

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