空母(航空母艦)搭載用の航空機。ふつう、この種のものを艦載機ともいう。空母は第一次世界大戦の末期に生まれ、第二次世界大戦時には戦艦にかわる海上戦力の中心となったが、艦上機もそれに伴い大きく発展してきた。空母が大型化し、カタパルト発進方式が進歩したことが、艦上機の高性能化に大きく影響している。現代の艦上機は、陸上滑走路に比べてはるかに狭い飛行甲板で発着するため、前脚部に設けた牽引(けんいん)棒をカタパルトにかけて射出され、着艦時には甲板上で横に張ったワイヤに尾部下面のフックをひっかけて制動する。こうした発着艦用装備に加えて、大きな降下角での激しい着艦に耐えられるよう脚を頑丈にし、さらに塩水による腐食対策を十分に施してあるのが艦上機の特徴である。エレベーターや格納庫の大きさによって機体寸法が制限されるので、主翼や尾翼の一部を折り畳み式にしたものが多い。重量的にはカタパルトの能力と甲板強度によって制限が加えられている。
第二次世界大戦時の空母が積んでいた艦上機は戦闘機、雷撃機、急降下爆撃機の3機種であったが、現在アメリカの大型空母は対地・対艦攻撃にも使える多用途戦闘機を主力とし、これに加えて早期警戒機、電子戦機、輸送・連絡機、対潜・救難ヘリコプターも搭載している。こうした艦上機群をそろえた空母は大きな攻撃力を備えているが、建造・運用の経費が巨額なため、現在このような大型空母を多数保有するのはアメリカ海軍だけで、ほかにはそれよりやや規模の小さい空母をロシアとフランスが備え(中国も建造計画を進めている)、いくつかの国が小型空母をもつにすぎない。小型空母にはSTOVL(ストーブル)(Short Take-Off and Vertical Landing、短距離離陸・垂直着陸)が可能な戦闘・攻撃兼用機とヘリコプターを搭載するのが一般化しつつある。
[藤田勝啓]
旧日本海軍では航空母艦の飛行甲板から自力で発進する航空機を艦上機と呼び,他の艦艇に搭載される航空機(艦載機)と区別した。現在では,一般にこの区別は明確でなく,艦艇の飛行甲板から発着する航空機を総称して艦上機あるいは艦載機と呼んでいる。
艦上機は,第2次世界大戦において,とくに日米双方で大量に使用され,海軍の主要作戦兵力としての地位を不動のものとした。艦上機は,一般に着艦後には,飛行甲板を滑走路として確保するために速やかに艦内に収容される。また,できる限り多くの機体を限られた艦内のスペースに収容するために,主翼翼端の上方折曲げ,胴体後部の側方折曲げ,尾翼翼端の折曲げなど折りたたみ式の独特の工夫が施されている。発進にあたって,短い甲板上の滑走路で浮揚に必要な機速を得るために,一般に蒸気圧で機体を強制的に射出するカタパルトを利用する。着艦の際は,機体底部のフックを甲板上のアレスティング・ギヤ・ケーブルにひっかけ,ケーブルが油圧により展張されることにより,短い滑走距離で急停止できるようになっている。アメリカの空母を見ると,第2次大戦直後の5万5000トンのミッドウェー級から最新鋭の9万4000トンのニミッツ級原子力空母へと逐次大型化してきており,1空母当りの艦上機の編成も初期のころの戦闘機,攻撃機の組合せから今では空中給油機,対潜機,電子戦機,早期警戒機と多様な機種の組合せになってきている。艦上機にはヘリコプターもあり,いずれも着艦の際の強い衝撃を考慮して,脚の剛性などに対して厳しい設計基準が設けられている。
執筆者:別府 信宏
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