映像文化(読み)えいぞうぶんか

日本大百科全書(ニッポニカ)「映像文化」の解説

映像文化
えいぞうぶんか

映像とは光学的、もしくは機械的に形成される画像をいい、具体的には写真、映画、テレビ、コンピュータ・グラフィクスなどが、映像を用いた視覚表象である。したがって映像文化とは、これらの視覚表象を手段として成立する文化現象一般をさす。映像文化は第一次世界大戦以降、科学技術の進歩による産業化社会の伸長とともに急激に発達し、今日では長い歴史をもつ言語文化とほぼ同等に、日常生活と密接にかかわる重要な文化となっている。

 映像は広義には英語のイメージimageの訳語であるが、人間の脳裏に意識される内的なイメージとは異なり、具体的な画像として外的に示される。また、厳密には映像とはそれ自体では意味をもたず、そこに込められているなんらかの言語的意味あるいはシンボル的な意味が了解されて、初めて意味をもつ。よって、映像文化は言語文化と相互的で緊密な関係にあるが、映像の特質の一つでもある「だれもが受け入れやすい現実感」が、映像表現をわかりやすいもの、映像文化を親しみやすいものにしている。また映像は基本的に機械的な複製が可能な画像である。W・ベンヤミンは、オリジナル芸術の「ほんもの」という概念は「いま」「ここに」しかない一回性による礼拝的価値に支えられているのに比し、複製手段としての映像の活用はこの1回限りの性格を克服し、事物を空間的にも時間的にも大衆の近くへ引き寄せ、「平等に対する感覚」を現代の人々にもたらしたと指摘した。しかし今日では、マス・メディアのあまりにも多量で画一化した映像の反復供給が、映像信仰ないしは物神化を大衆の日常心理に植え付けつつあるという批判も大きい。そうしたマス・メディアによる大衆操作の危険性を学的に解明すべく、ビジュアルリテラシー、メディアリテラシーなど、映像文化を批評的観点から考察する新たな学問分野が構築されつつある。

[平木 収]

『重森弘淹著『写真芸術論』(1967・美術出版社)』『佐々木基一編・解説、高木久雄他訳『ヴァルター・ベンヤミン著作集2 複製技術時代の芸術』(1970・晶文社)』『ジョン・A・ウォーカー、サラ・チャップリン著、岸文和他訳『ヴィジュアル・カルチャー入門――美術史を超えるための方法論』(2001・晃洋書房)』『吉見俊哉編『カルチュラル・スタディーズ』(2001・講談社選書メチエ)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典「映像文化」の解説

映像文化
えいぞうぶんか

芸術や文化の創造,人と人とのコミュニケーションを行なう手段として映像が用いられること。文字を媒体とする活字文化と対比して用いられる。おもに写真映画アニメーションテレビジョン,ビデオ,コンピュータ・グラフィックス CGインターネット映像・画像などをさすが,まんが,ポスター,絵画など視覚的表現全般を含むこともある。古代から暗室を使って外部を逆さに映す技法があり,19世紀にその原理を開発して写真が生み出された。一方で,世界各地にスクリーンを使った影絵芝居幻灯が存在した。また 19世紀半ばには,視覚の残像効果を利用して動画を見せる玩具も流行した。それらを統合するかたちで 19世紀末に映画が誕生,映像文化の中心となった。その後,テレビ放送やビデオソフトが普及し,20世紀後半には長方形の画像が映し出す文化が世界的に広がった。さらに 20世紀末からコンピュータとインターネットの発達によって,映像文化はバーチャル世界にも広がり,CGのように新たな現実を映像で表現することも可能になった。近年では街頭の映像による広告のほか,スマートフォン監視カメラに代表されるような小型の映像が日常生活にあふれている。

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