改訂新版 世界大百科事典 「昭電疑獄」の意味・わかりやすい解説
昭電疑獄 (しょうでんぎごく)
1948年に政治問題となった,復興金融金庫から昭和電工株式会社への融資にからむ贈収賄事件。昭和電工は森コンツェルンの重要な総合的化学工業会社であったが,戦災のため中心の川崎工場が壊滅的な打撃を受けた。また戦後の財閥解体を利用した芦田均らの策動により,社長が森暁から日野原節三に代わった。日野原は会社の再建と拡充のため復興金融金庫から巨額の融資を受け,その額は48年6月までに約23億6000万円,化学工業関係企業への融資の36%を占めた。その利権を入手するため,政・官・財界へ多額の金品をばらまいた。48年4月,衆議院不当財産取引調査委員会がこの問題を取り上げてから政治問題となり,警視庁は5月22日,昭和電工本社を強制捜査,6月23日には日野原を逮捕した。事件は拡大し,9月に元農林政務次官重政誠之,大蔵省主計局長福田赳夫,民主自由党顧問大野伴睦,興業銀行副総裁二宮善基,経済安定本部長官・前蔵相栗栖赳夫,10月には前副総理西尾末広らが逮捕された。芦田内閣は10月7日ついに総辞職し,芦田も12月7日に逮捕された。事件の背後ではGHQ内のGS(民政局)とG2(幕僚情報局)との対立がからみ,倒閣に利用された。逮捕者64名中44名が起訴されたが,58年の第二審までに芦田,福田,西尾ら多くが無罪となり,62年の最高裁判決で,日野原,栗栖,重政らの有罪(執行猶予)が確定した。
執筆者:川村 善二郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報