曽野綾子(読み)ソノアヤコ

デジタル大辞泉 「曽野綾子」の意味・読み・例文・類語

その‐あやこ【曽野綾子】

[1931~ ]小説家東京の生まれ。本名、三浦知寿子ちずこ。夫は作家三浦朱門しゅもん各国を取材し、戦争社会宗教など幅広いテーマで執筆作品に「遠来の客たち」「神の汚れた手」「天上の青」など。芸術院会員。平成15年(2003)文化功労者

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「曽野綾子」の意味・わかりやすい解説

曽野綾子
そのあやこ
(1931― )

小説家。東京生まれ。本名三浦知寿子(ちずこ)。聖心女子学院幼稚園から聖心女子大学英文科卒業までミッション教育を受ける。同人誌『ラマンチャ』『新思潮』同人。『遠来の客たち』(1954)が芥川(あくたがわ)賞候補となる。『海の御墓(おはか)』(1954)、『たまゆら』(1959)など、知的で洗練された都会的感覚と、人生に過度な期待を抱かない諦念(ていねん)、ロマンチシズムが融合した作品を発表、有吉(ありよし)佐和子とともに「才女時代」の先駆けとなった。『リオ・グランデ』(1961)、『生贄(いけにえ)の島』(1969)、『無名碑』(1969)、『人間の罠(わな)』(1971~72)、『ある神話の背景』(1971~72)、『神の汚れた手』(1979~80)など、世界各地に取材し、テーマも戦争、社会、神と幅広いが、貫いているのは人間を不完全なものとみるキリスト教的認識であり、同時に諦念、常識への反発が作品を豊かにしている。その後、眼疾のため執筆を一時停止するが、回復後はアフリカを舞台に『時の止まった赤ん坊』(1984)、ダム建設の現場に取材した『湖水誕生』(1985)、連続殺人事件をモデルに人間の罪を描いた『天上の青』(1990)や、ほかに『夢に殉ず』(1994)、『陸影を見ず』(1999~2000)などがある。また、ミリオンセラーの『誰(だれ)のために愛するか』(1970)をはじめとするエッセイが数多くあり、教育問題その他社会的な発言も多く、1995年(平成7)日本財団会長就任、97年NGO組織在外邦人宣教者活動援助後援会代表として読売国際協力賞を受賞した。作家の三浦朱門(しゅもん)が夫。1993年3月、日本芸術院恩賜賞受賞。日本芸術院会員。2003年文化功労者。

[尾形明子・田中夏美]

『臼井吉見解説『新鋭文学叢書7 曽野綾子集』(1960・筑摩書房)』『『曽野綾子選集Ⅱ』全8巻(1984~85・読売新聞社)』『『曽野綾子作品選集』全12巻(1985~86・光風社出版)』『『女性作家シリーズ10 曽野綾子 津村節子』(1999・角川書店)』

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知恵蔵mini 「曽野綾子」の解説

曽野綾子

作家。1931年、東京都生まれ。54年、聖心女子大学卒。同年に発表した「遠来の客たち」が芥川賞候補となり、作家デビューを果たす。『木枯しの庭』『神の汚れた手』『天上の青』などの小説から、シリーズ『夜明けの新聞の匂い』『アラブの格言』『老いの才覚』などの随筆まで、著書多数。社会的・政治的発言も活発に行っている。79年にローマ法王よりヴァチカン有功十字勲章を受章し、93年に日本藝術院賞・恩賜賞を受賞。2003年に文化功労者となり、12年には菊池寛賞を受賞した。1995年から2005年まで日本財団会長、13年には政府の教育再生実行会議の有識者メンバーを務めている。

(2015-2-18)

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