有り付く(読み)アリツク

デジタル大辞泉 「有り付く」の意味・読み・例文・類語

あり‐つ・く【有り付く】

[動カ五(四)]
求めていたものをやっとの思いで手に入れる。
㋐お金や食物などが手に入る。「小遣い銭に―・く」「思いがけないご馳走に―・く」
㋑働き口が見つかる。「割のいい仕事に―・く」
住みつく。安住する。
むすめは…さるかたに、したたかなるさまに―・きたり」〈夜の寝覚・一〉
異性と一緒に住む。結婚する。
「三人はみなみな―・き給ふ」〈伽・鉢かづき
似合う。ぴったりする。板につく。
「さし縫ひ着つつ、―・かずとり繕ひたる姿ども」〈総角
ある身分境遇に生まれつく。
「もとより―・きたるさ様の並々の人は」〈蓬生
[動カ下二]住みつかせる。また、仕官などさせて生活の道を得させる。身を固めさせる。
「殿ばら、今まで―・けざるこそ心にかかり候へども」〈曽我・四〉
[類語]勝ち取る勝ち得る射落とす射止めるせしめる物にする

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「有り付く」の意味・読み・例文・類語

あり‐つ・く【有付】

  1. [ 1 ] 〘 自動詞 カ行五(四) 〙
    1. ある場所に到着する。また、住みつく。安住する。
      1. [初出の実例]「旅とな思し召しそ。今いとようありつかせ給ひなん」(出典:狭衣物語(1069‐77頃か)四)
      2. 「亦、国に大水出でて人を流し里を失ふ。然れば、民有付く事難(かた)し」(出典今昔物語集(1120頃か)一〇)
    2. 夫婦となる。同棲する。
      1. [初出の実例]「妹は〈略〉わざとありつきたる男となくて、ただ時々かよふ人などぞありける」(出典:宇治拾遺物語(1221頃)三)
    3. 物事になれる。ある生活状態をしなれる。板についたふるまいをする。
      1. [初出の実例]「さるかたにありつきたりしあなたの年ごろは、〈略〉めなれて過ぐし給ふを」(出典:源氏物語(1001‐14頃)蓬生)
    4. あることが、自分の考えや趣味と一致する。納得する。下に否定語を伴うことが多い。
      1. [初出の実例]「なほざりのすさびにても、けさうだちたることは、いとまばゆく、ありつかず」(出典:源氏物語(1001‐14頃)総角)
    5. ある身分や環境に生まれつく。
      1. [初出の実例]「もとよりありつきたるさやうのなみなみの人は、〈略〉思ひあがるも多かるを」(出典:源氏物語(1001‐14頃)蓬生)
    6. ( 多く「世にありつく」の形で ) 世の中に生活していく。暮らしを立てる。
      1. [初出の実例]「京に有ける生侍(なまさぶらひ)、〈略〉世に有付く方も无(な)かりける程に」(出典:今昔物語集(1120頃か)二七)
    7. 仕官や奉公する所を得て、生活が安定する。就職して落ち着く。
      1. [初出の実例]「ありつくべき主君をばとらずして、〈略〉たれがための忠節になるべきぞ」(出典:仮名草子・大仏物語(1642)下)
    8. 植物が土に根をおろす。
      1. [初出の実例]「扨植てはやく有付やうに土をかたむるかげん有」(出典:清良記(1629‐54頃)功者万作物の種子置様之事)
    9. 金、食べ物など望んでいたものを、やっと手に入れる。また、偶然手に入れる。
      1. [初出の実例]「世中に人のありつくをきくに、重代の重宝金銀をつかひ、おもはゆくまばゆきばかりたのむゆへに、それにめでてきもをいるか」(出典:仮名草子・清水物語(1638)上)
      2. 「愈(いよいよ)西洋料理に有り付いたなと思って」(出典:吾輩は猫である(1905‐06)〈夏目漱石〉四)
  2. [ 2 ] 〘 他動詞 カ行下二段活用 〙
    1. 住みつかせる。落ち着かせる。また、なれさせる。
      1. [初出の実例]「嫗を極楽へぐしてゆき、よからむ縁をたづねつつ、ありつけ候へ彌陀仏」(出典:御伽草子・常盤の姥(類従所収)(1504‐21頃))
    2. 仕官、奉公、結婚などをさせて生活を安定させる。
      1. [初出の実例]「今までありつけざるこそ、心にかかり候へども」(出典:曾我物語(南北朝頃)四)
      2. 「そんなら私に預さんせ、一両日の内に有付(アリツケ)てやりませう」(出典:浄瑠璃・難波丸金鶏(1759)伏見京橋)
    3. ( 自動詞的に用いる ) [ 一 ]に同じ。
      1. [初出の実例]「有付た事は被付たがようござる」(出典:虎明本狂言・目近籠骨(室町末‐近世初))
  3. [ 3 ] 〘 自動詞 カ行下二段活用 〙 ( 「ありつけたり」の形で ) そういう状態が、ずっと普通のこととなっている。これまでのならわしである。
    1. [初出の実例]「いまの時分はありつけたる事をさへなにかと申候に、新きなる事はいよいよふつそうの事にて候ほとに」(出典:言継卿記‐天文二年(1533)八月二九日紙背)

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