化学式BaCl2。重晶石BaSO4の粉末,木炭,塩化カルシウムの混合物を赤熱してから熱湯で抽出し,不純物を除いたのち結晶を析出させると得られる。
BaSO4+4C+CaCl2─→BaCl2+CaS+4CO
炭酸バリウムと塩酸の反応でも得られる。飽和水溶液から常温で析出するのは2水和物BaCl2・2H2Oで,これは平たい四角形の無色結晶である。125℃で無水和物BaCl2となり,中間の温度(60℃)では1水和物BaCl2・H2Oが生ずる。これらも無色の結晶で,無水和物は融点962℃,沸点1560℃,比重d24=3.85,20℃で100gの水に36g溶け,潮解性ではないがわずかに吸湿する。有毒。レーキ顔料,媒染剤などの原料とし,また硫酸イオンの定性・定量分析用試薬,他のバリウム塩の合成原料として用いられる。
執筆者:曽根 興三
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
バリウムと塩素の化合物。以前は重晶石(硫酸バリウム)を塩化カルシウムと溶融して製造していたが、現在では硫化バリウム溶液と塩酸との反応によっている。飽和溶液から常温で無色の扁平(へんぺい)な結晶、または粉末状の二水和物が析出する。二水和物はわずかに吸湿性をもつ。これは121℃で無水和物に変わる。無水和物は常温では単斜晶系の結晶であるが、転移点925℃で等軸晶系に変わる。水に溶けやすいが、エタノール(エチルアルコール)やアセトンには溶けない。レーキ顔料、バリウム塩の原料、ボイラー用水の軟化剤などのほか、分析試薬としても用いられる。
[鳥居泰男]
塩化バリウム
BaCl2
式量 208.2
融点 962℃
沸点 1560℃
比重 3.85(測定温度24℃)
溶解度 36g/100g(水20℃)
BaCl2(208.24).炭酸バリウムを塩酸に溶かして濃縮すると二水和物が得られる.二水和物を加熱すると一水和物を経て113 ℃ で無水物となる.無水物は低温で単斜晶系.密度3.89 g cm-3.925 ℃ で等軸晶系に転移する.融点963 ℃,沸点1560 ℃.水によく溶けるが潮解性はない.二水和物は無色の偏平な四角形の単斜晶系結晶.密度3.097 g cm-3.水に易溶,エタノールに難溶,アセトンに不溶.レーキ顔料,金属の熱処理剤,バリウム塩の製造,殺そ剤,殺虫剤,皮なめしなどに用いられる.分析試薬として硫酸イオンの定性および定量に重要である.有毒.[CAS 10361-37-2:BaCl2][CAS 10326-27-9:BaCl2・2H2O]
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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