木材乾留(読み)もくざいかんりゅう

改訂新版 世界大百科事典 「木材乾留」の意味・わかりやすい解説

木材乾留 (もくざいかんりゅう)

木材を熱で分解して固体液体,そのうちとくに液体を得る操作。ただし固体として木炭を得るのを目的とするときには,製炭として区別する。酸素があると燃えるだけなので,酸素をできるだけ除いて熱分解を行う。1時間に20℃の温度上昇で加熱すると,ふつう200℃までに水がなくなり,180℃ぐらいから木材は分解しはじめる。280~300℃では発熱反応となり分解は急速にすすむ。400℃ぐらいから遅くなり,450℃で分解はほぼ終わる。分解残渣として固体が残るほか,途中に発生するガスは冷却すると一部が液化する。この液体を粗木酢液という。粗木酢液に含まれる高沸点物などを木タールという。熱分解時のガスのうち冷却しても液化しなかったものを木ガスと呼ぶ。高温で発生したものほどCO,CH4,H2の割合が多いのでよい燃料となる。広葉樹材1m3から木ガス80~100m3が得られ,発熱量は2000~3000kcal/m3である。

 木ガスは,いわば木酢液や木炭製造の副産物であった。しかし木材が石油天然ガスと違って再生可能な資源であることから,木ガス製造を目的とする熱分解も行われている。いろいろな工夫をすれば,発熱量が都市ガスに近いものもうることができる。
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百科事典マイペディア 「木材乾留」の意味・わかりやすい解説

木材乾留【もくざいかんりゅう】

木材を乾留して木炭木酢液木タール,木ガスを得る操作。かつては乾留炉を用いて木材チップの乾留が工業的に行われたが,現在では主要製品の酢酸メタノールメチルアルコール)が安価に合成されるようになったためほとんどすたれた。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「木材乾留」の意味・わかりやすい解説

木材乾留
もくざいかんりゅう
dry distillation of wood

空気を断って木材をれんが製窯や鉄製レトルトで蒸し焼き(乾留という)にすることをいう。広葉樹の雑木廃材などを窯に入れ外部から加熱すると、まず木ガスが発生し、次に揮発分が留出し、最後に木炭が残る。揮発分は冷却、静置してタール分と木酢(もくさく)(木酢液)に分離する。タールは木材中の樹脂、脂肪類および高級フェノールを多く含み、これからクレオソートがとれる。木酢液は蒸留によりメタノール(メチルアルコール)をとったあと、処理をして濃酢酸を得る。化学原料を目的とした木材乾留は近時意味を失っており、木炭製造を主目的とした製炭工業は現存するが衰微の傾向をたどっている。

[野村正勝]

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世界大百科事典(旧版)内の木材乾留の言及

【乾留】より

…製鉄用に木炭が使用されたためであるが,同時に木酢液からはメタノールや酢酸が回収された。現在は製鉄用には石炭からのコークスが用いられるようになり,またメタノールや酢酸は合成法によって供給されるようになって,木材乾留工業はほとんど消滅した。【冨永 博夫】。…

※「木材乾留」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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