大韓民国大統領李承晩が1952年1月18日に発した〈海洋主権宣言〉によって設定された区域。この水域の表面・水中・海底にあるすべての天然資源,鉱物,水産物を韓国政府が保護・保全・利用する権利をもち,水産,漁業に対し主権を行使する,ただし航行の自由は妨げないとした。日本では李ラインと通称され,韓国では当初〈李承晩(イスンマン)ライン〉,〈海洋主権線〉と呼ばれたが,のちに後者は〈平和線〉と改称した。その区域は東側は咸鏡北道慶興郡牛岩面高頂,北緯42°15′東経130°45′,北緯38°東経132°50′,北緯35°東経130°,北緯34°40′東経129°10′,北緯32°東経127°を結んだ線,南側は北緯32°の線,西側は北緯32°東経124°,北緯39°45′東経124°,鞍馬島西端,韓・華(中国)国境の西端をそれぞれ結んだ線を境界とする朝鮮半島周辺の水域である。1945年9月28日に出されたトルーマン・アメリカ大統領の大陸棚と水産資源保存水域に関する二つの宣言にならったもので,52年4月28日にサンフランシスコ講和条約が発効すると,マッカーサー・ライン(1945年9月27日に指定され,49年9月には東経130°,北緯24°にまで拡張され,50年5月には一定区域でのカツオ,マグロ漁業が許可された)が撤廃され日本漁船の操業範囲が拡大されるため,それを制限することを目的とした。韓国政府は53年12月12日,漁業資源保護法を制定し,李ライン内に入った日本漁民をこの法律違反として漁船とともに大量に拿捕(だほ)するにいたり,釜山収容所に抑留した。1952年から開始された日韓会談で日本側からこの不当性が主張され,65年,この会談の合意により李ラインは廃止され日韓漁業協定にもとづき,韓国沿岸12カイリを韓国の専管水域とした。
執筆者:佐々木 隆爾
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韓国(大韓民国)の李承晩大統領が1952年1月18日に「海洋主権宣言」によって朝鮮半島周辺の広大な水域に主権を主張し画定した線。この線は、場所によっては距岸200海里近くに及んだ。海洋主権宣言は、韓国の大陸棚の資源に主権を主張し、また、上述の水域の表面、水中および海底の天然資源に主権を主張した。この宣言は、第二次世界大戦後の日本漁業を規制したマッカーサー・ラインの廃止(1952)に伴って、日本漁船の韓国周辺水域への出漁を阻止しようとしたもので、韓国は、宣言の前後にわたり多数の日本漁船を拿捕(だほ)した。この李承晩ラインは、1965年(昭和40)の日韓漁業協定によって、実質的に廃止された。
[水上千之]
出典 旺文社日本史事典 三訂版旺文社日本史事典 三訂版について 情報
朝鮮半島周辺海域に設定された韓国の主権行使の範囲を示す線。1952年(昭和27)1月18日李承晩大韓民国大統領の「海洋主権宣言」による。これによって日本漁船の立入り禁止区域が設けられ,操業中の日本漁船がしばしば拿捕された。日本は公海自由の原則を主張して対立したが,65年の日韓基本条約締結によって撤廃された。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
…太平洋戦争の敗戦後,占領軍の指令に基づいて日本漁業の操業区域は1945年9月27日以降マッカーサー・ライン内に限定された。これがサンフランシスコ講和条約で52年4月25日限り撤廃されることとなったのに先立ち,韓国周辺水域における日本漁業の脅威を見越した李承晩韓国大統領は,同年1月18日〈韓国領土近海の大陸棚の上部,表面,地下にあるすべての鉱物と水産資源について,韓国はその主権を留保し,行使する〉という海洋主権宣言を発し,いわゆる李ライン(李承晩ライン)を設定した。これはその後の200カイリ漁業専管水域にも相当する広大な水域から他国漁船を排除するもので,(当時としては)国際法に反する一方的措置であるとして,日本漁業者の強い反対がみられた。…
…韓国側がこれを全朝鮮における唯一の合法政権であることを確認したものと説明したのに対し,日本側は休戦ライン以南を現に管轄している事実を確認したものにすぎないと説明したが,その後の運用実態(朝鮮民主主義人民共和国との国交未回復等)からすれば,前者の解釈のニュアンスが投影していることは否定しがたい。〈日韓漁業協定〉では,〈李承晩ライン〉を撤廃して韓国側の漁業専管水域(直線基線から12カイリ)と共同規制水域を限定するかわり,日本側が漁業協力資金を供与することが取り決められた。〈在日韓国人の法的地位および待遇に関する協定〉では,協定にともなう日本側の特別法により66年1月から5年の間の本人申請にもとづき,いわゆる〈協定永住権〉が付与されることとされたが,在日朝鮮人のすべてが韓国を支持しているわけではなく,〈分断と同化〉の在日朝鮮人政策を現出させることになった。…
※「李承晩ライン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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