改訂新版 世界大百科事典 「東京オリンピック大会」の意味・わかりやすい解説
東京オリンピック大会 (とうきょうオリンピックたいかい)
1964年に東京で開催された第18回オリンピック大会。かつて東京は1940年の第12回大会の開催都市に決定していたが,日本軍の中国侵攻と第2次世界大戦への突入により,大会開催を返上したことがある。1959年のIOC総会(ミュンヘン)で東京開催が決定されると,政府主導で大会組織委員会が設置され,国家の威信をかけた国策事業として取り組まれ,〈アジアで初めて〉〈世界は一つ〉の標語のもと,聖火を国内4班に分けて全国リレーするオリンピック・キャンペーンがくりひろげられた。また所得倍増・高度経済成長政策に大会事業を組み込み,競技施設のほかに東海道新幹線や首都高速道路建設などに総経費1兆0800億円を投資,オリンピックの巨大化,華美化を促した。大会をめぐっては,63年ジャカルタで開催された新興国競技大会(ガネフォ)に参加した朝鮮民主主義人民共和国と主催国インドネシアがオリンピック規約違反に問われ,両国選手団が開会直前に引き上げる事件があった。大会の会期は10月10日から24日までの15日間で,開会式の模様は人工衛星で初めて宇宙中継された。参加国数はそれまでの最大の94ヵ国,参加選手数5586人,実施競技は柔道とバレーボールが新たに加わり20競技,総種目数163であった。競技では〈褐色の弾丸〉R.L.ヘーズの陸上男子100m優勝,〈はだしの王様〉アベベのマラソン史上初の2連勝,〈泳ぐ芸術品〉D.ショランダーの競泳4種目制覇,〈体操の名花〉V.チャスラフスカの演技などが話題を呼んだ。日本選手も〈東洋の魔女〉女子バレーボールの優勝,体操男子団体総合の2連勝,マラソンの円谷幸吉の活躍など熱戦を展開,日本の若い競技者を刺激し,一般の人々にもスポーツ熱が高まる契機になった。なお,日本は16種目で金メダル,銀メダル5種目,銅メダル8種目を獲得した。開会日の10月10日は,66年に〈体育の日〉として国民の祝日となったが,2000年から10月第2月曜日に変更された。
→オリンピック
執筆者:広畑 成志
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報