改訂新版 世界大百科事典 「東京城」の意味・わかりやすい解説
東京城 (とうけいじょう)
Dōng jīng chéng
中国,東北の黒竜江省寧安県東京城にある土城で,渤海の上京竜泉府(忽汗城)の遺址に比定されている。1933,34年に東亜考古学会が大規模に発掘調査し,報告書《東京城》を出版した。牡丹江畔の景勝の盆地にあり,東西4.5km,南北3.3kmのやや東西に広い長方形の外城の北詰中央に内内城,その周囲に内城が位置し,日本の平城京と同形式で,唐の長安城をおよそ8分の1に模写縮小したものであることが確認された。内城は皇城に相当し,禁苑・官衙区域であるが,内内城は宮城に対応し,王宮の部分といえる。内城の南辺中央に,朱雀門にあたる門跡が発掘され,そこから外城南辺中央へ,朱雀大路ともいうべき道路が走る。外城内には条坊の存在を思わせる長方格地割の痕跡が残る。内内城では六つの宮殿跡や,その回廊跡が発掘され,そこから花文方塼,緑釉柱座,緑釉の各種屋瓦,石彫の獅子頭などが出土した。城内には随所に寺址があって塼仏(せんぶつ)や塑像が出土し,宮殿址から発見された和同開珎は,日本と渤海との交渉をあらためて印象づけた。
執筆者:礪波 護+西谷 正
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報