杵島山(読み)きしまやま

日本歴史地名大系 「杵島山」の解説

杵島山
きしまやま

杵島郡北方町・白石町・有明町武雄たちばな町にまたがり、南西の一部は藤津郡塩田町に接する南北に細長い丘陵。鳴瀬なるせ山・勇猛ゆうもう山・犬山いぬやま岳などの数峰からなり、標高三四五メートルを最高とする。弥生時代初期の貝塚線から判断して四、五千年前は有明海に浮ぶ島であったと推定される。

「日本書紀」景行紀に

<資料は省略されています>

とあるが、この「杵嶋山」を「太宰管内志」は多良たら(現佐賀・長崎県境)または松浦郡キシ(岸)(現東松浦郡)のことかともいう。

肥前風土記」逸文には「杵島県 県南二里 有一孤山」として

<資料は省略されています>

とあり、「万葉集」の

<資料は省略されています>

原形かとされ、古代の歌垣山の一つといわれている。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「杵島山」の意味・わかりやすい解説

杵島山
きしまやま

佐賀県南西部にある丘陵性山地有明(ありあけ)海に面する白石平野(しろいしへいや)の西方にほぼ南北に連なる。杵島郡の白石町と武雄(たけお)市、嬉野(うれしの)市にまたがる。南北約9キロメートル、東西約4キロメートル。北は六角(ろっかく)川、南は塩田川で画され、西に武雄盆地などが開ける独立山地。輝石安山岩類などからなり、勇猛山(いみょうやま)(259メートル)、犬山岳(342メートル)、飯盛(いいもり)山(318メートル)、白岩山(340メートル)などの峰々を総称する。最高点は武雄市、白石町、嬉野市の境界で約370メートル。谷浅く、山麓(さんろく)各所溜池(ためいけ)が分布し、ミカン園などが開ける。筑波(つくば)山とともに古代の歌垣(うたがき)で知られる。『万葉集』に登場し、『肥前国風土記(ひぜんのくにふどき)』逸文(いつぶん)にも、……歳毎(としごと)の春と秋に手を携えて登り望み、楽飲(さけの)み歌い舞いて、曲盡(うたつ)きて帰る。歌の詞(ことば)に云(い)わく、「あられふる杵島が岳を峻(さか)しみと草採りかねて妹(いも)が手を執(と)る」と、歌垣の様相や杵島曲(ぶり)について記している。多くの古墳群が分布し、西側のおつぼ山神籠石(こうごいし)、出水(でみず)法要の水堂安福寺(あんぷくじ)、雨乞(あまご)い農耕神の稲佐(いなさ)神社などが知られる。

[川崎 茂]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「杵島山」の意味・わかりやすい解説

杵島山
きしまやま

佐賀県南西部,武雄盆地と白石平野の間にある山。標高 342m。地質時代は島であったと推定される。杵島山を中心として北西から南東へ長さ約 10km,幅約 3kmの山地が形成されている。常陸筑波山,摂津の歌垣山とともにわが国の三大歌垣山として知られ,『肥前国風土記』に春秋歌垣が催されたことや杵島曲 (きしまぶり) が記されている。江戸時代は藩の狩猟場で,現在は公園となっている。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

今日のキーワード

潮力発電

潮の干満の差の大きい所で、満潮時に蓄えた海水を干潮時に放流し、水力発電と同じ原理でタービンを回す発電方式。潮汐ちょうせき発電。...

潮力発電の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android