(読み)サメ

デジタル大辞泉 「鮫」の意味・読み・例文・類語

さめ【×鮫】

サメ目の軟骨魚の総称。体は細長く、背びれは通常2基あり、尾びれは上葉が長い。口は頭の下面にあり、えらあなは体側に5~7対並ぶ。歯は常に新しいものが生えかわる。動物食。卵胎生が多いが、卵生胎生のものもある。大半は海産で、現生種は250種、日本近海にいるのはウバザメオナガザメツノザメノコギリザメなど150種。肉は練り製品の原料に、ひれは中華料理に用いられる。ふか。わに。 冬》「ふなびとら―など雪にかき下ろす/楸邨
[補説]書名別項。→
[類語]甚平鮫鋸鮫青鮫頰白鮫葦切鮫小判鮫

さめ【鮫】[書名]

金子光晴の詩。また、それを標題作とする詩集。詩集は昭和12年(1937)に発表で、他に「おつとせい」「どぶ」などの詩を収める。当時の日本の全体主義的社会を鋭く批判した作品。

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精選版 日本国語大辞典 「鮫」の意味・読み・例文・類語

さめ【鮫】

  1. [ 1 ] 〘 名詞 〙
    1. 軟骨魚綱のうち、エイ類を除いたものの総称。体形は紡錘形または延長形で、骨格は軟骨からなる。体表は歯とよく似た構造をもつ皮歯または楯鱗(じゅんりん)と呼ばれるうろこでおおわれ、ざらざらするものが多い。一般に吻(ふん)はとがり、口は体の下面に開き、歯が鋭い。鰓孔(さいこう)は体側に五~七対ある。大きさは全長約二〇センチメートルのツラナガコビトザメから一八メートルに達するジンベイザメまで種類によって異なり、大形種をフカと呼ぶこともある。体内受精で、卵生、卵胎生、胎生などがある。一部の種は凶暴で、ホオジロザメなど人を襲うものもある。臀びれの有無や鰓孔の数、歯の形態などによって分類される。暖・熱帯の海洋に多く分布。ふつう肉はかまぼこの材料に、ひれは乾燥して中華料理の材料に、皮は研磨用のやすりなどに利用。《 季語・冬 》
      1. [初出の実例]「凡て北の海に捕るところの雑(くさぐさ)の物は、志毗、(ふぐ)、沙魚(サめ)、烏賊」(出典:出雲風土記(733)嶋根)
    2. さめがわ(鮫皮)」の略。
      1. [初出の実例]「只今為立てたる鎧一縮に、鮫(サメ)懸けたる白太刀」(出典:太平記(14C後)三三)
    3. さめはだ(鮫肌)」の略。
      1. [初出の実例]「うれにくい・またもどったがさめかいの」(出典:雑俳・軽口頓作(1709))
  2. [ 2 ] 詩集。七編。金子光晴作。昭和一二年(一九三七)刊。日中戦争前後の日本の軍国主義的弾圧の中で、国家権力に対する抵抗精神を高度の象徴的手法によって示した詩集。

鮫の語誌

生命力が強く、凶暴な性質が畏怖されるところから、古来、霊的な存在と認められてきた。上代の文献に見えるワニは多く鮫を指したといわれる。現代日本語でも、方言で鮫をワニと称する地域(島根県・兵庫県但馬)がある。

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普及版 字通 「鮫」の読み・字形・画数・意味


17画

[字音] コウ(カフ)
[字訓] さめ

[説文解字]

[字形] 形声
声符は(交)(こう)。〔説文〕十一下に「魚なり。皮は刀をるべし」という。〔子、議兵〕に「楚人は鮫革犀(さいじ)、以て甲と爲す」とあり、武具の良材とされた。

[訓義]
1. さめ。
2. 蛟と通じ、みずち、竜。

[古辞書の訓]
和名抄〕鮫 佐米(さめ) 〔名義抄〕鮫 サメ

[熟語]
鮫革・鮫鰐・鮫函・鮫魚・鮫室・鮫珠・鮫・鮫・鮫人・鮫涙
[下接語]
河鮫・魚鮫・群鮫・大鮫

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改訂新版 世界大百科事典 「鮫」の意味・わかりやすい解説

鮫 (さめ)

金子光晴の詩集。1937年人民社刊。〈おつとせい〉〈泡〉〈塀〉〈どぶ〉〈灯台〉〈紋〉〈鮫〉の7編を収録。1928年から5年間,光晴は,東南アジアを経てヨーロッパまで放浪旅行し,植民地の犠牲のもとに繁栄する西欧の実態を見,それに追随しようとする日本のあせり,軍国主義の圧政を見た。そこで,詩集《こがね虫》(1923)の耽美とは一転して,戦争へと傾斜する暗い現実を批判的にえぐり出そうとした。〈おつとせい〉で,内部と外部の世界を同時的に把握し,自己の位置を明確にしながら,〈灯台〉で天皇制権力機構を,〈鮫〉で世界の帝国主義国を象徴的方法であばいている。昭和期を代表する抵抗詩集として高く評価されている。
執筆者:

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「鮫」の意味・わかりやすい解説

鮫(金子光晴の詩集)
さめ

金子光晴(みつはる)の詩集。1937年(昭和12)8月、人民社刊。「おつとせい」「泡」「塀(へい)」「どぶ」「燈台(とうだい)」「紋(もん)」「鮫」の7編を収録しており、長編詩が多い。「おつとせい」は「おいら。/おつとせいのきらいなおつとせい。/だが、やつぱりおつとせいはおつとせいで/ただ/『むかうむきになつてる/おつとせい』」と、俗衆のなかにいて反俗の姿勢をとる自己の位置を明確に打ち出している。「燈台」は天皇制権力機構を象徴的に照射して、強靭(きょうじん)な批判的精神を示し、「鮫」は世界の帝国主義国のエゴイズムを無国籍者の視点であばいている。批判的リアリズムによって構築された世界は、現代の一大モニュメントといえる。

[首藤基澄]

『『鮫』(1970・名著刊行会)』


鮫(青森県)
さめ

青森県南東部、八戸市(はちのへし)の東部海岸の一地区。旧鮫村。江戸時代から廻船(かいせん)の寄港地としてにぎわったが、江戸末期には港としての機能は馬淵(まべち)川河口の湊(みなと)に移った。現在、魚市場冷凍工場がある。

[編集部]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「鮫」の意味・わかりやすい解説


さめ

青森県南東部,八戸市の一地区。旧村名で,1929年八戸に合併。北海道南東海域から三陸沖にわたる広大な漁場を控え,漁業の根拠地として漁船の出入りが激しい。大規模な魚市場や冷凍工場がある。ウミネコの島として有名な蕪島がある。

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デジタル大辞泉プラス 「鮫」の解説

真継伸彦の小説。1963年、第2回文藝賞中・短編部門受賞。

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動植物名よみかた辞典 普及版 「鮫」の解説

鮫 (サメ)

動物。軟骨魚綱,板鰓亜綱に属する,エイ目を除く魚類の総称

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