生命力が強く、凶暴な性質が畏怖されるところから、古来、霊的な存在と認められてきた。上代の文献に見えるワニは多く鮫を指したといわれる。現代日本語でも、方言で鮫をワニと称する地域(島根県・兵庫県但馬)がある。
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
金子光晴の詩集。1937年人民社刊。〈おつとせい〉〈泡〉〈塀〉〈どぶ〉〈灯台〉〈紋〉〈鮫〉の7編を収録。1928年から5年間,光晴は,東南アジアを経てヨーロッパまで放浪旅行し,植民地の犠牲のもとに繁栄する西欧の実態を見,それに追随しようとする日本のあせり,軍国主義の圧政を見た。そこで,詩集《こがね虫》(1923)の耽美とは一転して,戦争へと傾斜する暗い現実を批判的にえぐり出そうとした。〈おつとせい〉で,内部と外部の世界を同時的に把握し,自己の位置を明確にしながら,〈灯台〉で天皇制権力機構を,〈鮫〉で世界の帝国主義国を象徴的方法であばいている。昭和期を代表する抵抗詩集として高く評価されている。
執筆者:首藤 基澄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
金子光晴(みつはる)の詩集。1937年(昭和12)8月、人民社刊。「おつとせい」「泡」「塀(へい)」「どぶ」「燈台(とうだい)」「紋(もん)」「鮫」の7編を収録しており、長編詩が多い。「おつとせい」は「おいら。/おつとせいのきらいなおつとせい。/だが、やつぱりおつとせいはおつとせいで/ただ/『むかうむきになつてる/おつとせい』」と、俗衆のなかにいて反俗の姿勢をとる自己の位置を明確に打ち出している。「燈台」は天皇制権力機構を象徴的に照射して、強靭(きょうじん)な批判的精神を示し、「鮫」は世界の帝国主義国のエゴイズムを無国籍者の視点であばいている。批判的リアリズムによって構築された世界は、現代の一大モニュメントといえる。
[首藤基澄]
『『鮫』(1970・名著刊行会)』
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