六訂版 家庭医学大全科 「染色体異常の病気」の解説
染色体異常の病気
せんしょくたいいじょうのびょうき
Chromosome aberration
(子どもの病気)
どんな病気か
先天的に染色体の数や構造に異常があり、そのためにいろいろな症状を示すものです。新生児160人に1人の割合でみられます。
数の異常には
倍数性は半数性の染色体23本の3セット以上をもつ異常で、3倍体(染色体数69本)や4倍体(染色体数92本)があります。これらは通常自然流産します。
異数性はある染色体が増減するような異常です。流産することが多く、出生に至るものは限られています。
構造の異常には
均衡型は染色体が量的には正常と変わらないもので、不均衡型は染色体の一部が増減しているものです。不均衡型はある遺伝子群が余分にあるか不足しているため、何らかの症状がみられます。均衡型は無症状のことが多いですが、切断点が重要な遺伝子の上にあった時などは、それに応じた症状がみられます。
原因は何か
精子や卵子はつくられる過程で
不分離の原因はいろいろあげられていますが、母親の加齢に関係することがよく知られています。構造の異常は、精子や卵子がつくられる過程で染色体の切断や再結合が起こることによります。染色体の切断には、放射線やある種の化学物質などが関係するといわれています。精子では15%、卵子では20%が染色体の異常をもっています。
症状の現れ方
一般に
検査と診断
症状から染色体異常症が疑われる場合は、染色体の検査を行います。採取した血液中のリンパ球に、ある処置をして染色体を染めて顕微鏡で観察します。ギムザ染色が一般的ですが、高精度で染める方法もあります。また、最近はFISH法やCGH法が開発され、染色体の非常に細かい部分の解析も可能になってきています。
治療の方法
根本的な治療法はなく、症状に応じて治療を行うことになります。たとえば心臓の合併症には手術が行われることがあります。日常生活の指導や訓練などの発達の支援も、大切になります。
病気に気づいたらどうする
症状から医療機関で気づかれることがほとんどです。家族内での再発の心配に対しては、遺伝カウンセリングが行われます。また、多くの染色体異常症で家族会が活動しており、情報収集に有用です。
小林 武弘
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報