検査の種類(臨床検査の基礎知識)

六訂版 家庭医学大全科 の解説

臨床検査の基礎知識
検査の種類
(健康生活の基礎知識)

 検査には、大きく分けて、検査の流れからみる分類と、検査の方法からみる分類があります。

●検査の流れからの分類

A:スクリーニング検査

 どこか異常な部分がないかどうかを「ふるい分ける」検査を、スクリーニング検査といいます。一般的な外来受診で受ける検査、あるいは定期健康診断や人間ドックでの検査が相当します。通常は、血液検査、尿・便検査、簡単なX線撮影、心電図などがセットされています。

B:精密検査~確定のための検査

 スクリーニング検査で異常が見つかった時は、さらに詳しい検査に進みます。健診や人間ドックでは、とりあえず再検査をするということが多いでしょう。

 ここからは、目的をかなり絞り込んだ検査が行われ、場合によっては確認・確定のための多くの検査が追加されることもあります。

C:治療効果の判定のための検査

 前述したように、治療の成果を確かめ、今後の治療方針を確認するための検査です。薬の副作用をみるために行う検査もあります。

●検査の方法からの分類

 大別して、生体検査と検体検査があります。

A:生体検査

 いろいろな器械を使って、体の機能を直接的に調べる検査です。主な生体検査には、以下のようなものがあります。

①X線検査

 X線(レントゲン線)を体に照射して撮影するもので、ほとんど全身が対象になります。体の状態をそのまま撮影する単純X線撮影と、それでは写りづらい部分・機能をみるために、特定の造影剤(バリウムヨードなど)を体に投与してから撮影するX線造影撮影に分かれます。

 単純X線撮影では、腹部や胸部、骨格などがよく撮影されます。乳房の場合は、一般にマンモグラフィと呼ばれています。

 X線造影撮影には、胃をはじめとした消化管造影、心血管や腹部などの血管造影、胆嚢胆管造影、逆行性膵胆管造影などがあります。

②CT検査

 CTは、computer tomography(コンピュータ断層撮影)の略です。検査する部位に5㎜きざみくらいでX線を照射し、その結果をコンピュータで解析して、横断面をスライスした形に画像化したものです。頭部、(けい)部、胸部、腹部などを調べます。

③MR(MRI)検査

 MRは、magnetic resonance(磁気共鳴診断)の略です(MRIという場合のIはimaging)。検査する部位に電磁波を照射して体との相互作用により得られる変化を撮影し、コンピュータで処理して画像診断する検査で、全身のほとんどの臓器の形態的診断法として行われています。

 MRを応用した検査に、MRAMRCPがあります。前者は血管系、後者は膵管・胆管を診断するものです。

④超音波検査

 人にはきき取れない高周波の音(超音波)を体に向けて発信し、跳ね返ってくる反射波(エコー)をキャッチして画像化する検査です。エコー検査とも呼ばれています。腹部、心臓、頸動脈甲状腺、乳房などを調べます。

⑤内視鏡検査

 先端に小型のカメラまたはレンズを内蔵した細長い管を体の内部に挿入して、実際にその様子を観察して撮影する検査です。いわゆる胃カメラが代表的なものですが、直腸・大腸、気管支、膀胱など、管状の臓器のほとんどに応用されます。

 内視鏡検査は、観察、撮影のみならず、細胞や組織の採取、造影剤の注入、簡単な切除手術なども可能です。

 前項の超音波検査と組み合わせた超音波内視鏡という方法も行われるようになってきました。

⑥シンチグラフィ検査

 放射性同位元素(ほうしゃせいどういげんそ)標識物質(ラジオアイソトープ)を体内に注入し、特殊な検出器(シンチカメラ)で検出して、核医学情報処理装置で画像処理して解析する検査です。脳や心臓、腎臓の血液の流れなどを診断します。

⑦心電図検査

 体の表面に9つの電極を接着し、心筋(心臓の筋肉)が収縮するときに生じる電位変化を記録して、心収縮のリズムや心筋の肥大、虚血(心筋に酸素が十分供給されない状態)、電解質の異常などを調べる検査です。

 そのほか生体検査には、血圧測定、脳波検査アプノモニター検査(簡易睡眠時呼吸検知検査)、筋電図検査、骨塩定量検査、視力・眼底・眼圧検査、聴力検査、平衡機能検査などがあります。

B:検体検査

 生体から採取した血液、尿、便、(たん)、そのほかの体液や、内視鏡や手術で採取した細胞や組織を多角的に調べ、いろいろなデータを得る検査です。測定・検出する対象から、一般に次のように分類されます。

①血液一般検査

 血液の主要成分である各種の血球数(赤血球白血球血小板)やヘモグロビン血色素(けっしきそ))の量、赤血球沈降速度などを測定します。

②血液凝固・線溶検査

 血液が固まる作用(凝固)、さらにそれが溶ける作用(線溶)を調べる検査です。出血時間やプロトロンビン時間フィブリノゲンなどの凝固因子、フィブリン分解産物(FDP)などの検査があります。

③血液生化学検査

 血液中に含まれるさまざまな酵素や蛋白、コレステロール、糖、尿酸などの物質、電解質などを測定するものです。

④免疫血清検査

 血液中に存在している、細菌やウイルスなどに対する抗体や炎症反応を測定します。血液型もここに属します。

⑤尿・便の検査

 尿からは、尿の中に出てきた蛋白や糖、細胞成分や細菌などを測定します。便は主に、消化管からの出血の有無(便潜血(べんせんけつ)反応)を調べます。

⑥ホルモン検査

 血液中に含まれる各種のホルモン量(甲状腺ホルモンやインスリンなど)を測定します。

⑦生検

 生体の臓器や組織の一部を採取して顕微鏡で観察し、病理組織学的に診断する検査です。バイオプシーともいいます。主に、がんの確定診断として行われます。

⑧腫瘍マーカー

 腫瘍とは、体内の細胞の一部が突然、異常分裂して増殖し、しだいに大きくなってしこりになるものです。良性と悪性があり、悪性腫瘍が「がん」です。

 体内に腫瘍ができると、健康な時にはほとんどみられない特殊な物質が、その腫瘍から大量につくられ、血液中に出現してきます。この物質を「腫瘍マーカー」といいます。

 腫瘍マーカーは、がんの発生臓器と強い関連性をもつという特徴があるため(参照)、血液中にこの物質が基準値以上に出てきたときは、がんのあることが推測されます。

 ただし、現状では、がんの検査として理想的とはいえず、がんの早期発見のためというよりも、主としてがんを診断していくうえでのひとつの補助的な検査、あるいはがんを治療していくうえでの経過観察の検査として行われています。


出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報