腫瘍マーカー(読み)シュヨウマーカー

デジタル大辞泉 「腫瘍マーカー」の意味・読み・例文・類語

しゅよう‐マーカー〔シユヤウ‐〕【腫瘍マーカー】

tumor marker悪性腫瘍から高い特異性をもって産生されるが、正常細胞や良質疾患ではほとんどみられない物質。それらの血中濃度や尿中濃度を調べることで腫瘍有無や場所の診断に用いられ、がんなどの早期発見、臨床経過の追跡、予後の判定などに役立つ。ただし、偽陰性偽陽性の場合もあり、診断の確定はできない。

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六訂版 家庭医学大全科 「腫瘍マーカー」の解説

腫瘍マーカー
(女性の病気と妊娠・出産)

 腫瘍マーカーとは、通常、腫瘍ができるとその表面に特異的に発現してくる物質で、腫瘍の大きさや広がりに応じて、血液中にその物質がたくさん流入してきます。腫瘍マーカーは、腫瘍の発生している臓器と強い特異性があるため、血液検査高値を示すようなら、その臓器に腫瘍のあることが推測されます。

 婦人科の腫瘍でとくに特異性があるものに、CA125があります。この腫瘍マーカーは卵巣腫瘍、とくに卵巣がんの場合に高値を示します。ただし、ほかの腫瘍マーカーでも同様ですが、子宮内膜症(しきゅうないまくしょう)などのほかの病気でも高値を示すことがあるため、このマーカーの検査値が上がっていたからといって、すぐに卵巣がんだと診断することはできません。

 また、このCA125は月経中には高値になることがあるため、検査は月経時を避けて行うことがすすめられます。その他、骨折イレウス腸管閉塞)でも高値を認めます。

 CA19­9は、婦人科以外の腫瘍でも高値を示すことが知られていますが、婦人科腫瘍では卵巣腫瘍、とくに成熟嚢胞性奇形腫(せいじゅくのうほうせいきけいしゅ)で高値を示すことがあります。

 卵巣がんは、いわゆる腺がんであることが多いのですが、扁平上皮(へんぺいじょうひ)がんが多い子宮(けい)がんでは、SCCという腫瘍マーカーがよく高値になります。

 また、胎盤から分泌されるhCGという腫瘍マーカーは、胞状奇胎(ほうじょうきたい)絨毛(じゅうもう)がんなどで高値を示します。

 これらの腫瘍マーカーは、一般に病気の病状に従って増減しますが、その診断上の意義は、画像診断などを含めた検査の一部にすぎないことを頭に入れておくことが大切です。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「腫瘍マーカー」の意味・わかりやすい解説

腫瘍マーカー
しゅようまーかー

癌(がん)細胞がつくりだす特異的な物質、また癌細胞に対して生体が生み出す物質。この物質の血中および尿中濃度を測定すれば、癌の存在およびその種類を知る手がかりとなり、また癌の大きさや進行度なども推定できる。しかし、癌以外の要因で高値を示す偽陽性の場合や、癌が存在しても高値を示さない偽陰性の場合もあり、これだけで確定診断とすることはできない。そのため、おもに癌診断の補助的手段として、また治療効果の観察や再発を監視するモニタリングなどの目的で用いられる。

 代表的な腫瘍マーカーには、以下のようなものがある。

 AFP(α(アルファ)フェトプロテイン) 肝細胞癌など。

 CEA(癌胎児性抗原) 消化器癌、乳癌など。

 CA19-9(糖鎖抗原) 膵(すい)癌、胆道癌など。

 CA125(糖鎖抗原) 肺癌、乳癌、膵癌など。

 hCG(ヒト絨毛(じゅうもう)性ゴナドトロピン) 子宮癌、卵巣癌など。

 NSE(神経特異エノラーゼ) 肺癌、神経芽細胞種、甲状腺癌など。

 PSA(前立腺特異抗原) 前立腺癌。

 これらのなかでPSAは、その存在が確定診断につながる数少ない腫瘍マーカーの一つである。マーカーの検査方法としてはおもに、採血してモノクローナル抗体を使い、血中に遊離してくる物質を検出して濃度を測定することが多いが、尿や分泌液など生検検体や癌の病理組織標本を用いたり、遺伝子産物を用いる特異な方法もある。研究の成果として、新しい腫瘍マーカーが次々とみいだされ臨床応用に結びつけられている。また、ある癌の腫瘍マーカーとして認められていたものが、ほかの癌のマーカーとして新たにみいだされることもある。

[編集部]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「腫瘍マーカー」の意味・わかりやすい解説

腫瘍マーカー
しゅようマーカー
tumor marker

腫瘍 (しゅよう) が作り出す物質で,腫瘍の目印 (マーカー) となるもの。血液中あるいは尿中の濃度を測定し,腫瘍診断の目安とする。腫瘍マーカーとしては,α-フェトプロテイン (AFP) ,カルチノエンブリオニックアンチゲン (CEA) ,ベンス・ジョーンズタンパクなどがある。このほか,モノクローナル抗体の発見により,CA19-9,CA125など,新しい腫瘍マーカーが開発され,利用されている。この腫瘍マーカーは腫瘍の診断のほか,治療効果の判定,再発の早期発見などにも役立つ。治療開始前に高い値を示したものが治療後に低下すれば,その治療の効果があったと考えられ,さらに,いったん低下した腫瘍マーカーの値が再上昇したら,積極的に検査などをすることにより,腫瘍の再発を早期に診断することが可能となる。

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百科事典マイペディア 「腫瘍マーカー」の意味・わかりやすい解説

腫瘍マーカー【しゅようマーカー】

正常細胞や良性疾患からは産生されず,または少量にすぎず,悪性腫瘍のみから特異的に産生され,これが腫瘍診断に使用できる物質をさす。早期診断,臨床経過の追跡,予後の判定などに応用される。たとえば胎児期につくられるαフェトタンパクは,肝細胞性肝臓癌(がん)に特異的に検出され,癌胎児抗原が大腸癌の診断に使われるなどである。

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PET検査用語集 「腫瘍マーカー」の解説

腫瘍マーカー

がんなど腫瘍が発生したときに、血液中に増える特異物質のことをまとめてこう呼びます。腫瘍マーカーの検査は、身体のどの部分に発生したがんか、どんな性 質のがん細胞か、再発がないかなど判別するのに役立ちます。しかし腫瘍以外の疾患や良性の腫瘍でもふえることがあり、これだけでがんの有無を診断すること はできません。

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