榛名火山の活動から生れたカルデラ内の一部に水をたたえる火口原湖で、古くは
「万葉集」巻一四、東歌の相聞のうちの上野国歌に「上毛野伊香保の沼に植ゑ子水葱かく恋ひむとや種求めけむ」がある。「伊香保沼」は歌枕で、「八雲御抄」に「いかほのぬま」として「在山上池」と注される。証歌は右の歌で榛名湖のことを詠じたとする説がある。「古今集」巻一九に載る壬生忠岑の長歌に「くれ竹の 世世のふること なかりせば いかほのぬまの いかにして 思ふ心を のばへまし(下略)」とみえる。同音反復で「いかにして」の序詞である。尭恵の「北国紀行」文明一八年(一四八六)一〇月一七日の記事には「ぬのたけといふ、麓に流水あり、是をいかほのぬまといへり」と記される。
赤木文庫本「神道集」巻七(上野国第三宮伊香保大明神)によると、赤城大明神の妹伊香保姫が夫高光中将のあとを追って伊香保沼に入水し、伊香保大明神になったという。
出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報
群馬県高崎市榛名湖町にあり、榛名山の火口原湖。面積1.19平方キロメートル、湖面の標高1084メートル、東西0.8キロメートル、南北1.5キロメートルの曲玉(まがたま)状で周囲4.8キロメートル。湖岸から急傾斜で深くなり、湖底は平坦(へいたん)で、最深部は水深12.5メートル。湖底には珪藻骸泥(けいそうがいでい)が多い。透明度はときによって違うが3.6~9.5メートルで、富栄養型をなす。湖水は北東隅に火口瀬を刻み沼尾(ぬまお)川となって吾妻(あがつま)川に流れ下る。南西側では1904年(明治37)につくったトンネルによって南斜面の灌漑(かんがい)用水に利用されている。湖面に榛名富士の映った姿は美しい。湖の周囲は県立榛名公園に指定され、湖岸には第二次世界大戦後急増した観光集落があり、夏はキャンプや高原学校、冬は全湖面が結氷しスケートやワカサギの穴釣りに訪れる人が多い。伊香保(いかほ)、高崎からバスが通じる。
[村木定雄]
群馬県中央部,榛名山の山頂部にある火口原湖。高崎市の北端部にあたる。面積1.2km2,湖面標高1084m,周囲5km,最深部12.5m。古くは〈伊香保の沼〉と呼ばれ,東岸の円錐形の榛名富士を水面に映す。冬は一面結氷してワカサギの穴釣りの名所として知られ,スケートリンクも設けられている。湖の南西岸にはレストハウス,旅館,みやげ物店などが集中し,榛名山観光の基地をなす。高崎駅や渋川駅からバスの便がある。なお湖の水は北東部から沼尾川となって,榛名山北斜面の東吾妻町東端部を流下して吾妻(あがつま)川に注ぐ。また湖の南端から天神峠下をトンネルで導水して高崎市の旧榛名町方面の灌漑に利用されている。
執筆者:有末 武夫
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