群馬県のほぼ中央に位置し、群馬郡・北群馬郡・
榛名山は幾つかの峰々の総称であるが、古くは伊香保とよばれていた。厳秀(いかほ)の義と考えられ、「万葉集」巻一四の東歌のなかに数首が載る。
第三首の「ねろ」の「ろ」は東歌特有の感動の意を添える接尾語。「伊香保嶺」は「五代集歌枕」「八雲御抄」にあげられる。「ハルナ」の地名は、前掲「万葉集」の第一首目にある「
出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報
群馬県の中央部にある複式成層火山。赤城山,妙義山とともに上毛三山と呼ばれる。《万葉集》には伊香保嶺(いかほね)の名で詠まれる。関東平野北部に広がるなだらかなすそ野の上に開析のすすんだ急峻な山体をのせる。山頂部には東西に長い長円形のカルデラがあり,その中に火口原湖の榛名湖,円錐形の山容をもつ中央火口丘の榛名富士(1390m)がある。カルデラ壁をつくる外輪山は最高峰の掃部ヶ岳(かもんがたけ)(1449m)をはじめ烏帽子ヶ岳(えぼしがたけ),鬢櫛(びんぐし)山,天目山などからなる。南麓の室田,宮沢付近は,カルデラ形成時に流出した軽石流が厚く堆積し広い台地をなしている。山体東部にある二ッ岳(1343m)は旧火山体上に噴出した溶岩円頂丘で,最も新しい火山活動によるものである。二ッ岳の噴火は記録にはないが,このとき噴出した軽石火山灰が山麓の古墳群をおおっていることから,5世紀末から6世紀初めにかけてと推定されている。軽石火山灰の噴出に次いで斜面の河谷に軽石流が流出し,最後に流動性の少ない溶岩によって溶岩円頂丘が形成された。軽石火山灰の降下はおもに北東方向で,赤城山を経て尾瀬沼にまで達している。この火山灰は北東斜面の渋川市の旧伊香保町付近で数m,赤城山北西斜面で約1mの厚さで地表をおおい,この地域の農業開発を遅らせている大きな原因となってきた。しかし軽石層はコンクリートブロックの原料として採掘利用されている。
榛名山の東麓,南麓は,軽石流により河谷が埋積されたため比較的平たんで,放射谷や湧泉により水利のよいところでは水田も開け,多くの集落が立地している。緩斜面は桑畑が卓越し,日本有数の養蚕地帯となっている。北部や西部の山麓は多くの放射谷に刻まれ,わずかな平たん地に第2次大戦後の開拓地が分布するにすぎない。旧伊香保町には二ッ岳北麓に泉源をもつ伊香保温泉がある。火口原は榛名高原とも呼ばれる草原で,ここから榛名富士山頂へはロープウェーが通じている。榛名山の南を刻む榛名川の河谷には,古くから山岳信仰の参拝者を集めてきた榛名神社がある。
執筆者:森山 昭雄
榛名山の信仰的要素は赤城山のそれと類似する点が少なくない。たとえば,《神道集》に伊香保姫が赤城御前の妹と説かれているのをはじめ,女人の入水伝承,榛名と赤城の神戦譚,近世期の御師(おし)制度の発達と広範な信仰圏の形成など,榛名・赤城両山には共通点が多い。ということは両山の信仰が常に対比される形で展開してきたといえよう。しかし古代においては榛名という名がみえず伊香保嶺といわれ,《延喜式》神名帳に〈榛名神社〉があり,初めて榛名の名が登場する。この神社は中世には満行(まんぎよう)権現(本地は勝軍地蔵)と称し,また榛名山寺(巌殿(がんでん)寺,榛名寺)ともよばれて修行者の霊場となった。なかでも鎌倉の鶴岡八幡宮とも関係がある頼印大僧正が住した14世紀が,榛名山信仰の高揚してきた時期といえよう。近世期の御師制度の発達によって関東地方はもとより広範な地域に講集団が形成されているが,雨乞いや筒粥(つつがゆ)神事にみるように作神としての信仰がその中核にあり,俗に〈雨乞い神社〉ともいわれる。
執筆者:宮本 袈裟雄
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群馬県のほぼ中央部、利根(とね)川を挟んで東の赤城山(あかぎやま)に対する火山で、上毛三山(じょうもうさんざん)の一つとして県民に親しまれている。山体は二重式火山で、外輪山は輝石(きせき)安山岩で構成され、円錐(えんすい)型をなし、開析されてヤセオネ峠、臥牛(ふせうし)山、烏帽子(えぼし)ヶ岳、鬢櫛(びんぐし)山、掃部(かもん)ヶ岳(1449メートルで最高)、天神(てんじん)峠、天目(てんもく)山、磨墨(するす)峠などに分かれ、その内側のカルデラは東西4キロメートル、南北2.5キロメートルの楕円(だえん)形で、そこに角閃(かくせん)安山岩で構成される中央火口丘の榛名富士(1390メートル)や火口原の沼ノ原、火口原湖の榛名湖がある。沼ノ原から榛名富士までロープウェーが通じ、眺望に優れる。また、外輪山東部の山腹に相馬山(そうまさん)、水沢(みずさわ)山、二ッ岳の寄生火山があり、船尾(ふなお)滝がかかっている。二ッ岳の爆発(600年ころ)による軽石(かるいし)が北東麓(ろく)一帯に分布し、コンクリート・ブロックの原料として採掘されている。
山腹は耕地化が進み、東斜面の折原(おりはら)、六本松(ろっぽんまつ)にはリンゴの特産があり、西斜面には標高900メートルまで第二次世界大戦後開かれた開拓地がみられる。南腹の榛名神社は式内社で権現(ごんげん)造の壮麗な社殿が巌脚(がんきゃく)に建てられ、東腹に伊香保温泉(いかほおんせん)がある。
[村木定雄]
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(2012-12-13)
出典 日外アソシエーツ「事典・日本の観光資源」事典・日本の観光資源について 情報
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