六訂版 家庭医学大全科 「構造の異常」の解説
構造の異常(嚢胞性腎疾患)
こうぞうのいじょう(のうほうせいじんしっかん)
Anomalies in structure (cystic kidney)
(子どもの病気)
腎臓の実質内に、1個または2~3個の比較的大きな嚢胞ができている場合をいいます。加齢とともに発生頻度が増え、高齢者ではしばしばみられますが、小児では比較的まれです。
無症状のまま経過することが多く、腎不全に至ることはありません。時に、嚢胞が大きくなって周囲の臓器を圧迫するような場合、また悪性化の疑いがある場合は手術をします。
②
両側の腎臓全体にわたって、大小さまざまな無数の嚢胞ができ、次第に大きくなってくる病気です。成人型とも呼ばれますが、小児でも診断されるため、この名称は使われなくなってきています。
受診理由として多いのは、肉眼でわかる血尿や腰背部痛、検診で偶然発見された、家族に多発性嚢胞腎の人がいる、などです。
嚢胞が大きくなってくると、腎機能が次第に低下して腎不全になります。すべての人が腎不全になるわけではなく、60歳で約半数の人が末期腎不全になるとされています。10代で腎不全に至る場合もありますが、
他の問題としては、頭蓋内出血や高血圧、心臓の弁逆流を合併することがあります。また、
腹部超音波検査で、腎臓に多数の嚢胞を認めることにより診断されますが、若年者では発見されにくいこともあります。また、CT検査も有用です。
根本的な治療法はなく、進行性の腎不全に対しては、食事療法や血圧の十分な管理が大切です。
③
幼児型と呼ばれていたもので、新生児期には高血圧や腹部の圧迫症状、腎不全の管理が極めて難しく、生後まもなく死亡することも多い病気です。長期生存できても、肝線維化による
④
胎生期の初期の発生障害により、正常な腎臓の形成が行われず、大小多数の嚢胞がみられ、ブドウの房のような外観を示す病気です。腎臓は無機能ですが、通常は片側性のため、反対側の腎臓が正常であれば腎不全には至りません。
胎児の超音波検査が普及し、妊娠中に発見されることが多くなってきていますが、乳児期以降に腹部
他の臓器への圧迫症状や悪性化の所見がなければ、腎臓摘出を行うことなく、画像検査で経過を観察するのが一般的です。成長とともに、嚢胞は小さくなることも多く、20~30%は自然に消失します。
⑤
腎臓の集合管が嚢胞状に拡張する先天性の病気で、嚢胞内に尿が停滞するためにしばしば尿路感染症や腎結石、血尿で発見されます。成人に多く、大半が両側性に生じます。
特定の治療法はなく、軽症例は経過の観察となります。
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報