デジタル大辞泉
「多発性嚢胞腎」の意味・読み・例文・類語
たはつせい‐のうほうじん〔‐ナウハウジン〕【多発性×嚢胞腎】
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「多発性嚢胞腎」の解説
たはつせいのうほうじん【多発性嚢胞腎 Polycystic Kidney】
[どんな病気か]
大小さまざまな嚢胞(液体のつまった袋)が腎臓(じんぞう)の組織(腎実質(じんじっしつ))内に形成され、だんだん大きくなってくる病気です。
ほとんどの場合、左右両側の腎臓におこります。
嚢胞が大きくなると、まわりの腎実質は圧迫されて萎縮(いしゅく)し、腎臓のはたらきが徐々に低下して、最終的には慢性腎不全(まんせいじんふぜん)、尿毒症(にょうどくしょう)になります。
この病気は遺伝性であり、常染色体優性遺伝型(じょうせんしょくたいゆうせいいでんがた)と常染色体劣性遺伝型(じょうせんしょくたいれっせいいでんがた)の2つのタイプがあります。
常染色体優性遺伝(性染色体ではない染色体に原因遺伝子があって、対になった染色体の一方に原因遺伝子があればおこる)型では、嚢胞の形成はゆっくり進み、多くはおとなになって発病します。
常染色体劣性遺伝(性染色体以外の染色体に原因遺伝子があって、対になった染色体の両方に原因遺伝子があるとおこる)型では、発病が急激で、多くは、生後間もなく死亡します。
このことから、前者を成人型、後者を幼児型と呼ぶこともあります。
成人型では、遺伝子を調べた結果、16番目の染色体(一部、4番目の染色体)に異常が確認されています。
[症状]
成人型では、20歳ごろまで症状がみられないのがふつうで、多くの場合、30~40歳前後に症状が現われて初めて診断されます。
両方のわき腹に触れると、容易に嚢胞でふくれた腎臓がわかります。
また、腰痛(ようつう)、血尿(けつにょう)などがみられます。
病気が進むと、高血圧、たんぱく尿、食欲不振、疲労感など、腎臓の機能低下にともなう症状が現われ、ついには尿毒症になります。
肝臓(かんぞう)や膵臓(すいぞう)などにも、同じような嚢胞ができることがあります。
[検査と診断]
先に述べたような症状があり、家族に同様な症状や腎不全になった人がいれば、この病気が強く疑われます。
超音波検査、CTスキャン、MRIなどの画像で、特有の腎臓の変化がみられれば、診断が確定できます。
つぎに、超音波検査で、嚢胞がどの程度できているかみていきます。
そして、尿検査、血液検査で腎機能の状態を調べます。
[治療]
この病気では、腎機能の完全な回復は期待できないので、なるべく腎臓のはたらきを保たせるような保存的療法が基本となります。
腎機能の障害されている程度に応じて、日常生活の制限、食事療法、合併症(高血圧、血尿、尿路感染など)に対する薬物療法を行ないます。
放置すると、診断が確定して約10年で腎不全になることが多いので、定期的に泌尿器科(ひにょうきか)、または腎臓専門の内科で、腎機能や合併症の程度をチェックする必要があります。
不幸にして腎不全におちいったら、人工透析(じんこうとうせき)や腎移植を行ないます。
たはつせいのうほうじん【多発性嚢胞腎 Polycystic Kidney】
[どんな病気か]
左右両方の腎臓に嚢胞ができる病気です。
遺伝性で、常染色体劣性(じょうせんしょくたいれっせい)と常染色体優性(じょうせんしょくたいゆうせい)の2つの型に分けられます。
■常染色体劣性多発性嚢胞腎(じょうせんしょくたいれっせいたはつせいのうほうじん)(乳児型)
重症の場合では、出生まもない時期から腎不全(じんふぜん)になります。
両親に半分ずつ因子がある場合には、その子どもは4分の1の割合でこの病気が発症し、4分の2の割合で、病気は発症しないが、その因子を受け継ぐ保因者になり、残りの4分の1は、因子をもたないことになります。
■常染色体優性多発性嚢胞腎(じょうせんしょくたいゆうせいたはつせいのうほうじん)(成人型)
乳児型に比べて病気の進行はゆるやかで、中高年期になって腎不全になることが多いものです。
両親のいずれかに同じ病気があり、子どもには、2分の1の割合で病気が発症しますが、残りの2分の1の子どもは、因子ももたず、病気にもなりません。
[症状]
常染色体劣性多発性嚢胞腎による腎不全を防ぐ方法はありませんが、現在では、乳幼児でも透析治療ができるようになりました。
また、この病気では肝臓にも嚢胞ができ、障害がおこることもあります。
常染色体優性多発性嚢胞腎は進行がゆるやかなため、早い時期から生活管理、食事療法などによって、できるだけ長く腎機能を保つことができます。
また、高血圧を合併することも知られています。
[検査と診断]
腎超音波、腎盂造影(じんうぞうえい)、CTスキャンなどの画像検査によって、容易に診断できます。
家系内の腎疾患の有無によって、診断はより確実になります。
最近では、胎児(たいじ)超音波検査によって、早期に発見できるようになりました。
常染色体優性多発性嚢胞腎は症状が現われないことが多く、学童期以降に、血尿(けつにょう)や腹部腫瘤(ふくぶしゅりゅう)によって発見されることがほとんどです。
治療は慢性腎炎に準じた保存的療法を原則とします。
出典 小学館家庭医学館について 情報
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多発性嚢胞腎(遺伝性腎疾患)
【⇨ 11-13-1)】[小川大輔・槇野博史]
■文献
Adler A, et al: Development and progression of nephropathy in type 2 diabetes: the United Kingdom Prospective Diabetes Study (UKPDS 64). Kidney Int, 63: 225-232, 2003.
Parving HH, et al: Prevalence and risk factors for microalbuminuria in a referred cohort of typeⅡdiabetic patients: a global perspective. Kidney Int, 69: 2057-2063, 2006.
Yokoyama H, et al: Microalbuminuria is common in Japanese type 2 diabetic patients: a nationwide survey from the Japan Diabetes Clinical Data Management Study Group (JDDM 10). Diabetes Care, 30: 989-992, 2007.
出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報
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