家庭医学館 「横隔膜下膿瘍」の解説
おうかくまくかのうよう【横隔膜下膿瘍 Subphrenic Abscess】
腹膜炎(ふくまくえん)(「腹膜炎とは」)の一種で、横隔膜の下(腹腔(ふくくう)の上部)に膿(うみ)がたまった状態を横隔膜下膿瘍といいます。
横隔膜自体が悪くなったわけではありません。
胃潰瘍(いかいよう)、十二指腸潰瘍(じゅうにしちょうかいよう)、胆嚢炎(たんのうえん)、虫垂炎(ちゅうすいえん)などが進んで穿孔(せんこう)(臓器の壁に孔(あな)があくこと)をおこすと、食物や膿などの内容物が腹腔にもれ出し、腹膜炎がおこります。この膿が、横隔膜の下にたまっておこります。急性におこって発見されることが多いのですが、慢性のものもあります。
[症状]
激しい腹痛をともなうものが多いのですが、なかには痛みのほとんどないものもあります。高熱、悪寒(おかん)、戦慄(せんりつ)(震(ふる)えが止まらない)などがおこります。
[検査と診断]
上腹部を押すと強い痛みがあり、おなかはかたくなります。立って撮影した胸部X線写真には、横隔膜下にガスの像が写ります。これはたいてい、孔のあいた腸管などの臓器からもれ出たガスですが、細菌が産生したガスであることもあります。
血液検査では、白血球(はっけっきゅう)が増加し、血沈(けっちん)検査やCRP検査(炎症があると増えるC反応性たんぱくを調べる検査)などの炎症反応が高値となります。
超音波検査やCT検査をすると、腹部の状態が詳しくわかります。
[治療]
急性の腹膜炎によるものが多く、緊急に処置しなければなりません。手遅れになると死亡することもあります。
原因などの状況を診断し、開腹手術を行ないます。胃や腸の壁にあいた孔を縫い合わせたり、胆嚢を摘出したり、虫垂を切除したりして、腹膜炎の原因を除去します。
腹腔にたまっている膿を排出し、温水で腹腔を洗浄して清潔にしてから、抗生物質を散布します。
手術後にくすぶる炎症による膿や出血した血液がたまらないように、チューブを腹腔に入れ、膿が体外に排出されるようにします。
手術後は、ふつう抗生物質を点滴注射します。
[予防]
胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胆石(たんせき)などがある人は、早めに治療し、潰瘍によって臓器に孔があいたり、胆嚢炎がおこったりしないようにします。また、胆嚢炎や虫垂炎がある場合は、すみやかに治療を受けなければなりません。