地域の巨樹・名木の健康度を診断し、衰退原因を特定して樹勢回復・保全のための対策を提言できる専門技術の保有者。樹木の治療、後継樹の育成や保護、知識の普及や指導なども行う。日本緑化センターが認定する民間資格であり、認定試験の応募には樹木の保護管理等に関する業務経験が7年以上必要で、審査、研修、面接を経たのちに合否が決定される。
国の「民間技能審査事業認定制度」が廃止された2000年(平成12)12月までは各省庁大臣の認定を受けた機関による認定資格の一つで、農林水産大臣認定資格として認められていた。
この樹木医制度は、もともとは森林や樹木のもつ地球環境保全への効用が世界的に認められつつある気運のなかで、林野庁の「ふるさとの樹(き)保全対策事業」の一環として1991年(平成3)にスタートした。その4年後の見直しと新規事業(緑の文化財保全対策事業)発足に際して、緑の保全への貢献度の評価から、1995年に上記の農林水産大臣の認定資格となった(農林水産省告示第1871号)。その後、国の規制緩和政策に伴い、前記のように民間技能審査事業認定制度は廃止され、樹木医は公的資格ではなくなった。しかし、各地域における樹木医の地道な活動がマスコミによって取り上げられ、とくに巨樹・名木の外科手術による治療と樹勢回復が世間一般に注目されるにしたがって、樹木医資格取得希望者が急増した。樹木医資格取得者は2000年10月時点で約700名だったのが、2012年には2020名となった。
樹木医の多くが加入している日本樹木医会では、本部のほかに各都道府県支部と地域総支部を設け、地方自治体や地域集落の緑の保全対策のほか、地域住民への啓蒙などを行っている。また、樹木医の活動は海外にも紹介され、1999~2000年にはタイからの要請で、樹木医会の編成した樹木医チームによりサクヤイ森林公園にある世界一のチーク巨樹の樹勢回復処置が実施された。
[小林享夫]
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