日本大百科全書(ニッポニカ) 「歌津」の意味・わかりやすい解説
歌津
うたつ
宮城県北東部、本吉郡(もとよしぐん)にあった旧町名(歌津町(ちょう))。現在は南三陸(みなみさんりく)町の北東部を占める地域。1959年(昭和34)町制施行。2005年(平成17)同郡志津川町(しづがわちょう)と合併して南三陸町となった。JR気仙沼(けせんぬま)線BRT(バス高速輸送システム)、国道45号が通じる。旧町域の東は太平洋に面し、西には田束(たつかね)山、神行堂山(しんぎょうどうやま)などの山地がある。山林が多く、かつては木炭などの生産も多かった。耕地は全体の12%である。中心集落である伊里前(いさとまえ)は1693年(元禄6)に設けられた旧宿場である。泊浜(とまりはま)には1646年(正保3)幕府の鎖国海防令により設置された唐船番所跡がある。小漁港が多く、江戸時代以来漁業が盛んで、近年は浅海養殖業や水産加工品製造も行われている。海岸一帯は三陸復興国立公園(旧、南三陸金華山国定公園)に含まれる。館崎(たてざき)の「歌津館崎の魚竜化石産地及び魚竜化石」は国指定天然記念物。また、平泉藤原氏とのつながりを示す伝説が残されている。
[後藤雄二]