日本大百科全書(ニッポニカ) 「南三陸」の意味・わかりやすい解説
南三陸(町)
みなみさんりく
宮城県北東部、本吉郡(もとよしぐん)にある町。2005年(平成17)本吉郡志津川町(しづがわちょう)、歌津町(うたつちょう)が合併して成立。リアス海岸の志津川湾に面し、町域をJR気仙沼(けせんぬま)線BRT(バス高速輸送システム)、国道45号、398号が通る。三陸沿岸道路の志津川、南三陸海岸、歌津、歌津北の各インターチェンジがある。志津川湾沿岸部一帯は三陸復興国立公園(旧、南三陸金華山国定公園)の指定域で、湾内に浮かぶ椿島(つばきしま)のタブ、ハマベンケイソウなどの暖地性植物群落は、国指定天然記念物。なお、志津川湾は2018年にラムサール条約登録湿地となった。志津川湾内ではカキ、ワカメ、アワビ、ウニ、ギンザケなどの養殖漁業が行われ、マダコの水揚げも多い。またカマボコほかの水産加工品も特産。農林畜産業では米作のほかシイタケの栽培、肉用牛の飼育が盛ん。内陸部の入谷(いりや)地区は、奥州藤原氏の栄華を支えた産金地帯であったと伝える。江戸時代中期以降は養蚕が盛んになり、高品質の生糸を生産した。江戸後期に建てられた同地区の旧家を整備・開放した「ひころの里」には「シルク館」が併設され、機織りや繭細工が体験できる。歌津地区館崎(たてざき)の西海岸で、1970年(昭和45)に発見された魚竜化石(ぎょりゅうかせき)は世界最古級(約2億4200万年前)のもので、ウタツギョリュウ(学名ウタツザウルス)とよばれる。館崎海岸一帯は「歌津館崎の魚竜化石産地及び魚竜化石」の名称で、最初に発見された2体分の化石とあわせて、国指定天然記念物となっている。リアス海岸に位置するため、明治三陸地震大津波(1896)、昭和三陸地震大津波(1933)、チリ地震津波(1960)など、たびたび津波被害にあってきた。これらを教訓に、沿岸部には防波堤、防潮堤、水門などが整備された。しかし、2011年の東日本大震災では15メートルを超える大津波(気象庁発表)に襲われ、死者620人・行方不明211人、住家全壊3143棟・半壊178棟を数えた(消防庁災害対策本部「平成23年東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)について(第159報)」平成31年3月8日)。復興事業は2016年度に南三陸地方卸売市場(新魚市場)や防災集団移転促進団地、災害公営住宅の整備が完了、2017年には町役場新庁舎が開庁、2019年には生涯学習センターが開館し、志津川公民館と南三陸町図書館がセンター内に復旧するなど進捗(しんちょく)をみせている。町では地域コミュニティの再構築など残された課題に取り組んでいる。面積163.40平方キロメートル、人口1万2225(2020)。
[編集部]