北上高地(読み)キタカミコウチ

デジタル大辞泉 「北上高地」の意味・読み・例文・類語

きたかみ‐こうち〔‐カウチ〕【北上高地】

主に岩手東部を占める山地最高峰早池峰はやちね。南北約250キロメートルにわたって連なり、一部は青森と宮城にかかる。東西は最大幅で80キロメートル。西側に北上盆地、東側に三陸海岸がある。北上山地

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精選版 日本国語大辞典 「北上高地」の意味・読み・例文・類語

きたかみ‐こうち‥カウチ【北上高地】

  1. 東北地方北東部、青森、岩手、宮城の三県にまたがる高地。主体は北上川、三陸海岸の間にあり、八戸市の南方から牡鹿半島に及ぶ隆起準平原。最高峰は早池峰(はやちね)山(一九一七メートル)。北上山地。

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改訂新版 世界大百科事典 「北上高地」の意味・わかりやすい解説

北上高地 (きたかみこうち)

北上山地ともいう。北は青森県八戸市付近から岩手県の東半分を経て,宮城県牡鹿(おしか)半島におよぶ紡錘形の山地。南北延長240km,東西の最大幅77km余,標高は800~1000m前後のものが多い。北から平庭,早坂,外山,区界(くざかい),種山(物見山),荒川,貞任,和山などの高原は代表的な準平原で,古くから南部馬の放牧地として利用されてきた。最高峰は中央部にある早池峰(はやちね)山(1917m)で,北部に平庭岳,折爪岳や姫神岳,南部に五葉山や室根山などがあり,これらは浸食に耐えて残った残丘である。阿武隈高地,中国山地と並んで古く準平原化し,広大な浸食平たん面群が続く奥行きの深い山地である。山地内には軽米,葛巻,岩泉,川井,遠野,住田,大東,千厩などのおもな集落があり,内陸部と三陸海岸を結ぶ要路となっている。しかし交通路は河川,渓谷に沿ったトンネルや峠が多く,これが交通機能を弱め,人々の生活を孤立させて近代化を遅らせる要因となっていた。1970年代になって山地を横断する国鉄(現JR)山田線,釜石線,大船渡線の整備,地方道の国道昇格による道路舗装が進み,特に山地を縦断する国道340号線の整備,三陸沿岸を南北に走る国道45号線の全面舗装さらに西麓の北上盆地を南北に通じる東北自動車道(1986)と,北上高地の北部を横断する八戸自動車道(1989)の開通などが,産業の発展に大きな役割を果たし,辺地性は解消されてきている。北上高地の北部の村々では,かつてはヒエ,麦,大豆の二年三作と木炭が主産業であったが,近年,耐寒性の稲が普及し,また馬産から酪農,肉牛飼育への転換が進んでいる。南部では丘陵地帯を利用して酪農,葉タバコ,リンゴ,ブドウなどの商品作物の栽培が見られる。また北上高地には,カモシカが生息し,ハヤチネウスユキソウなどの高山植物が豊富な早池峰国定公園(1982指定)をはじめ五つの県立自然公園(折爪馬仙峡,久慈平庭,外山早坂高原,五葉山,室根高原)などがある。ほかに岩泉町の竜泉洞安家(あつか)洞などの鍾乳洞群,柳田国男の《遠野物語》で知られる民俗の宝庫遠野盆地(遠野市)などがある。
執筆者:

北上高地の地質は,大部分古生代中生代の地層およびこれらを貫く火成岩から構成されている。そのほか,高地北縁部や陸中海岸北部および北上川に面する地域などに,第三紀層および第四紀層が分布する。特に北上山地南部には,シルル紀から白亜紀前期の地層が分布し,多くの化石を含んでいる。このように多くの地質時代の地層が積みかさなって見られるのは,日本ではこの地域以外にはない。これらの浅海成相を主とする各地質時代の地層の分布は,盛岡から早池峰山,五葉山にかけて北上高地を斜めに走る早池峰構造帯の南西側に限られる。蛇紋岩などの貫入帯ともなっているこの構造帯の北東側には,チャートの多い地向斜堆積層が広く分布し,その地層はおもに二畳紀からジュラ紀の地質年代のものである。さらに陸中海岸沿岸には,白亜紀前期の酸性火山岩などをはさむ地層が分布する。構造帯南西部のものは南部北上型古・中生層,北東側のものは北部北上型古・中生層と呼ばれる。早池峰構造帯を境界に,両者の岩相の違いは著しい。さらに北上高地全域にわたり,白亜紀前期の年代を示す花コウ岩が広く分布する。これら白亜紀前期以前の地層および花コウ岩を著しい傾斜不整合で覆って,白亜紀中ごろの宮古層群が陸中海岸に分布する。この傾斜不整合で示される地殻変動は大島造山と呼ばれる。
執筆者:

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百科事典マイペディア 「北上高地」の意味・わかりやすい解説

北上高地【きたかみこうち】

岩手県東半部を占める山地。西は北上川馬淵(まべち)川の縦谷で限られ,東は太平洋に臨む。主として南部は古生層,北部は中生層からなり,標高1000〜1200mの高原状の隆起準平原で,最高点は早池峰(はやちね)山。雑穀作,放牧などの産業が行われる。
→関連項目岩手[県]北上盆地住田[町]大東[町]東和[町]遠野[市]宮城[県]

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「北上高地」の意味・わかりやすい解説

北上高地
きたかみこうち

東北地方北東部にある山地。北上山地ともいう。北は青森県八戸(はちのへ)付近から岩手県を経て宮城県牡鹿(おしか)半島に及ぶ南北約250キロメートル、東西最大80キロメートルの紡錘形をなした山地である。東部は三陸海岸で太平洋に臨み、西部は北上川を隔てて奥羽山脈に対する。かつて準平原化し、その後隆起して生じた隆起準平原で、北から平庭(ひらにわ)高原、早坂高原、区界(くざかい)高原、種山(たねやま)ヶ原などの広大な侵食平坦(へいたん)面がみられる。主として古生代ペルム紀(二畳紀)の粘板岩、砂岩、石灰岩などからなり、高地の中央部を花崗(かこう)岩からなる早池峰構造帯(はやちねこうぞうたい)が貫いている。平均標高は約1000メートルであるが、早池峰山(1917メートル)の周辺には1300メートル前後の山々が集中する。交通路はかつては河川、渓谷に沿った峠道で不便であったが、現在、JR山田線、釜石(かまいし)線、大船渡(おおふなと)線が通じ、第三セクターによる三陸鉄道も1984年(昭和59)開通した。さらに北上高地を縦断する国道340号、海岸線を走る国道45号の全面舗装は北上高地の産業開発に大きな役割を果たし、酪農と畜産に比重をおいた北上山系開発に期待が寄せられている。

[川本忠平]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「北上高地」の意味・わかりやすい解説

北上高地
きたかみこうち

北上山地ともいう。東北地方の東部にあり,北端は青森県八戸市付近,南端は宮城県牡鹿半島にいたる紡錘形の高地。南北全長 240km余。東西の最大幅 80km余。主として北部は中生層,南部は古生層から成る隆起準平原地形が各地にみられる。その高度は 800~1000m前後。特に平庭,外山,早坂,種山などの高原はその代表的なもので,古くから南部馬の放牧場として利用されてきた。最高峰は中央部にある早池峰山 (1917m) で,北部に平庭岳や折爪岳,姫神岳,南部に五葉山,室根山などがあり,早池峰山にはハヤチネウスユキソウなどの高山植物やカモシカ (特別天然記念物) がみられる。 1970年より,産業と自然の調和を基本に畜産,林産を柱とした北上山系大規模開発事業が進められた。

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世界大百科事典(旧版)内の北上高地の言及

【岩手[県]】より

…さらに東北自動車道が86年青森市まで全通,97年秋田自動車道も全通して,〈中央に遠い北国〉という古くからの課題が,ようやく克服されてきた。
[ダムと米と畜産]
 岩手県は,北上川縦谷盆地(北上盆地)とそれをはさむ奥羽山脈北上高地の3条の巨大な地形によって特色づけられ,東縁は三陸海岸線となっている。南流する北上川は一関市の南,狐禅寺付近で北上高地を横切るとき,宮城県域も含めて約25kmに及ぶ峡谷を形成している。…

【プレートテクトニクス】より

… (2)の例としては,北アメリカ西部のコルディレラ山脈中に多数の外来地塊が存在することがわかり,古地磁気,古生物学的証拠からそれらがはるか遠方から到来した地塊であると指摘されている。東北日本東側の北上高地,阿武隈高地なども白亜紀以前に南方から移動してきた外来地塊であると考えられる。それらの起源としてパシフィカPacificaのような超大陸を考える人もある。…

※「北上高地」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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