歴代宝案(読み)れきだいほうあん

日本歴史地名大系 「歴代宝案」の解説

歴代宝案
れきだいほうあん

解説 第一―三集(計二六二巻)・別集(四巻)からなり、一六九七年に第一集、一八五八年に第二集、六七年に第三集が成立。現存二四五巻。永楽二二年から同治六年までの四四四年に及ぶ琉球王国の中国・朝鮮・東南アジア諸国との往復文書文案琉球王府自ら編纂した外交文書集。原本は二部作成され一部は首里城に、一部は久米村に保管されていたが、沖縄県設置後、前者内務省へ移管されて関東大震災で焼失後者は一九三三年に県立図書館へ移管されたが、沖縄戦で散逸した。青写真版の鎌倉本・東恩納本のほか、写本に県立図書館本(那覇市立図書館蔵)・台湾大学本・東京大学史料編纂所本・鄭良弼本などがある。琉球外交史の根本史料。収録文書は中国(明・清)皇帝詔勅、礼部や福建布政使の咨文琉球国王の表文・奏文・咨文・符文執照など。別集には「仏英情状」を含む。

活字本 校訂本(一九九二年―刊行中)、訳注本(一九九四年―刊行中)、いずれも沖縄県教育委員会

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改訂新版 世界大百科事典 「歴代宝案」の意味・わかりやすい解説

歴代宝案 (れきだいほうあん)

琉球王国の外交文書を集めたもの。第1~3集,約250冊からなる膨大な記録。1424年(尚巴志王代)から1867年(尚泰王代)まで440年余に及ぶ文書が含まれ,全文漢文で記されている。17世紀末から18世紀初期,前後3回にわたって首里王府の手で編集された。内容は対中国関係(明・清2代)のものが大半を占めるが,中世(古琉球)のものには朝鮮をはじめ,シャムマラッカジャワスマトラアンナンなど東南アジア諸国関係のものもあり,琉球王国の対外交流の範囲とその内容を知ることができる。外交文書の形式も多彩であり,外交文書集として史料的価値が高い。近代に入り久米村(那覇の一角にあった中国人末裔の居留区)に秘蔵されていたが,1933年県立沖縄図書館に移管され研究者に公開された。だが,沖縄戦で散逸,現在は台湾大学所蔵の写本と研究者の手になる二,三の写本が残るのみである。
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百科事典マイペディア 「歴代宝案」の意味・わかりやすい解説

歴代宝案【れきだいほうあん】

琉球王国の外交に関する文書を集めた記録。1697年以降数次にわたり首里王府(しゅりおうふ)によって編纂された。現存するのは一集43巻・二集200巻・三集13巻・咨集1巻・別集2巻の計259巻。1424年から1867年に至る,明・清・朝鮮・暹羅(シャム)・安南・瓜哇(ジャワ)・三仏斉(シュリビジャヤ)・マラッカ・スマトラ・巡達(スンダ)・仏太泥(バタニー)との間に交わされた文書が収録される。近代以降は沖縄久米(くめ)村に密かに保管されていたが,1932年その存在が確認され沖縄県立図書館へ移された。しかし沖縄戦で原本は失われ,台湾大学所蔵の写本,および鎌倉芳太郎ら研究者の手による写本数種のみ残る。琉球王国と東南アジア各国との交流の実態を伝える資料として貴重。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「歴代宝案」の意味・わかりやすい解説

歴代宝案
れきだいほうあん

琉球(りゅうきゅう)王国の外交文書および文案を集成したもの。すべて漢文で表記されており、もともとは3集262巻、別集3よりなっていたが、その一部は現存しない。1424年(応永31)から1867年(慶応3)に及ぶ440年余の文書を含む。中国(明(みん)・清(しん))関係のものが大部分を占めるが、朝鮮をはじめ暹羅(シャム)、満剌加(マラツカ)、爪哇(ジヤワ)、安南(アンナン)など東南アジア諸国関係のものも含まれている。長く久米村(くめむら)に秘蔵されていたが、1933年(昭和8)から研究者の目に触れるようになり、研究が開始された。しかし、沖縄戦で原本は散逸、現在は台湾大学の筆写本ほか数種の写本が残っているにすぎない。外交文書形式の宝庫であると同時に、琉球王国の対外関係、対外貿易を知るうえでの一級史料である。

[高良倉吉]

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「歴代宝案」の解説

歴代宝案
れきだいほうあん

琉球王国の外交文書集。1424年から1867年までの国際交流史の根本史料。第1~3集,別集,目録の計270巻として編集され,中国・朝鮮・暹羅(シャム)・安南(アンナン)・爪哇(ジャワ)・満剌加(マラッカ)・蘇門答剌(スマトラ)など,東アジアから東南アジア諸国との往復文書を収める。文書の種類は中国皇帝の詔勅,礼部や福建布政使司の咨文(しぶん),琉球国王の表文・奏文・咨文・符文・執照文(しつしょうぶん)などが多い。沖縄県教育委員会から刊行中。

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